「佳主馬の馬鹿」
「……いきなり何?」


悪態を吐けば、先ほどまでパソコンを弄っていた手を止め、画面から目を反らし、こちらに目を向ける。佳主馬の眉間にはまるで彫刻刀で彫られたかの様な濃い皺が出来ていた。そりゃいきなり罵られたらそんな皺も出来るよね。


「大馬鹿野郎」


悪態を吐いたまま、床に置いてある佳主馬の手を握る。


「…何さ」


溜め息を吐きながら言葉を返してきて、相変わらずその眉間には皺が寄ってるものの私の手を優しく握り返してきてくれる。


「佳主馬なんて不細工だったらいいのに」
「はあ?」
「なんでそんなにモテんのよ」


私が怒ってる原因の根源を佳主馬にぶつける。一瞬、目を見開いてから吃驚してる表情をこちらに向けてる。


「もしかして…妬いてたの?」
「違うよ怒ってるの」
「それを嫉妬って言うんだけど?」
「違う」
「じゃあ、なに?」
「私は怒ってるし、寂しいの」
「なら、やっぱり嫉妬じゃん」


そう言いながら佳主馬が近付いてきて抱き締めてくれる。心臓が早く動いて身体中が熱くなる。


「大丈夫、僕は名前が好きだよ。だからそんな泣きそうな顔しないで。…ほら、笑いなよ」
「…痛い」
「だって名前が笑わないから」
「だからって頬を引っ張らないでよ」
「じゃあ笑って」


20100821


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