「先輩は好きな人いますか?」
「……」
「先輩?」
「…あ、うん。好きな人ね。好きな人かあー」


私は立向居くんが好きです、なんて口が裂けても言えない。ましてや目の前にその本人が居るもの余計に言えない。言える訳がない。だってフラれるのが目に見えてるもの。フラれるのを覚悟で自白するなんて私は絶対に嫌よ。


「名前さん」
「へっ?」


立向居くんがいきなり名前で呼ぶからなんとも情けない声が出てしまった。しかもそんな真面目な顔をして私を見ないでよ。


「俺は名前さんの好きな人が知りたいです」


何をこの子は言っている。いつもこういう話には恥ずかしがる一面を見せる癖に今日はそんな素振りは一度もない。


「俺、本気です」


何に?何に本気なの?私はどう答えれば良いのよ。頭の中がぐちゃぐちゃして思うように考え事が進まない。お陰で心臓は早く動いてるし、顔は熱くなる。冷や汗だって出て来てる。もうどうしたら…。


「名前さん…俺、」


そう言い、顔を真っ赤にしてもじもじし出す。あれ、この姿どっかで………ああそうかこの姿、告白する時の女子と似てるんだ。立向居くんが「あの…その、」と言っている姿は、告白寸前の女子そのもの。なにこれ。そんな素振りされたら私勘違いしちゃうよ?


「お、俺!名前さんの事が、」


え、なにこれマジ?マジで期待しちゃって良いの?え、でも。私がこのぐちゃぐちゃになってる頭をフル回転させてどう対処したら良いかを考えてたら立向居くんが釘を刺す。


「とっても良い先輩だと思ってますから!だから、好きな人が出来たら遠慮なく俺に相談して下さいね!」


ああ、もう本当に思わせぶりはきみの特技だ。私のときめきを返せ、この天然ボーイ。天然じゃなかったら今ごろ立向居くんは天国逝きよ。


20100816


「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -