(※先生設定)


最近の私は、午前8:00に毎日同じ電車に乗り勤務先の学校へ行く。
本来は車で通勤してるのだが、生憎その車は今整備中。レンタカーを貸して貰ったが、何とも言えないくらいダサかったから今こうして電車通勤だ。珍しく、晴矢とヒロトが乗せてくれると言っていたが、あの2人が乗っている…ましてや晴矢が運転してる車には絶対乗りたくないから断っておいた。


この時刻は、俗に言う通勤ラッシュの時間帯。おかげで座る場所も無く、目的の駅まで立ちっぱなし。はっきり言えば、私だって座りたい。周りには、むさ苦しいオヤジ共ばかり。なぜ朝から汗臭いのだ。座ってしまえばそんな事を気にしなくてもいいのに。


「はあ…」


なんていつもの事で。早く車の整備が終わらないだろうかと願うばかり。


「はあ」


本日二度目の溜め息を漏らす。毎日毎日同じ事の繰り返しの様にも思えるほど私は同じ生活しかしていなくて、つまらない。そうは思いながらも、何も新しい事が始められない。困ったものだ。
なんて事を考えながら、ふと窓の方に目をやれば寝てる女生徒を見付けた。あの身なりからして多分高校生だろう。
只今の時刻AM8時25分。普通ならこの時間に生徒は電車に乗っては居ない。おそらく遅刻したのだろう。


『次は〓〓駅〜』


アナウンスが鳴ると、パッと目を覚ました女生徒。顔を見て驚いた。ほんとに彼女は高校生なのだろうか。とても大人びた顔立ちをしている。多分モデルとか言う者になれそうな感じだ。


『まもなくドアが開きます』


そのアナウンスと共に、プシューと言う音をたてながらドアが開く。彼女は立ち上がり電車を降り様としていたが、群がるむさ苦しいオヤジ共の所為で中々進めないでいた。


「あ、すみません」
「いえ」


助けなきゃ、そう思ってるうちに体は動いてむさ苦しいオヤジ共を避けて彼女をドアまで誘導していた。


『まもなくドアが閉まります』


ああもう閉まってしまうのか。彼女に話し掛ける時間もないな。眉間に皺を寄せて、明らかに機嫌が悪くなった私のスーツの胸ポケットに付けていたネームプレートを見ながら彼女は「ありがとうございました…すず、のさん?」そう言って笑ったと同時にドアが音を立てながら閉まってしまった。


「あ、」


自分でも情けない声を出したと思う。前髪を引っ張りながら彼女に目を運ぶと偶然にも彼女もこちらを見ていた。そして今度は先程の比ではない元気な笑みで私に手を振っていた。とりあえず柄では無いが私も振り返しといた。
彼女は、背が低めで髪は肩ぐらいで大人びた顔とは裏腹に、なんだが小動物みたいだった。だが、彼女は私の嫌いな香水を付けていた。



その日はずっとあの彼女の事が頭から離れなかった。どこの学校なのか。歳は幾つなのか。名前は何と言うのか。おそらく私はあの時すでに一目惚れというのをしていたに違いない。全く、私らしくないがな。別にタイプでも何でもなかったのに恋をしてしまった。しかも彼女は女子高生。私は教師。この私がそんなへまをするとは思わなかった。


ずっと頭から記憶から
あの笑顔が消えない

(また彼女に会えないだろうか)


題:確かに恋だった
20100814


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