(※長い)


「だーもうっ!鬱陶しいっ!今すぐ離れろっ」


私がいきなり大声を張り上げれば、あからさまに不機嫌になるチューリップ野郎。


「っるせーな。急にでけー声出すなよ」
「あんた、暑苦しいんのよ!」


今、私の部屋にはチューリップ野郎と風介が居る。幸いヒロトはまた雷門中に行ってるからまだいい。風介もソファーで私の漫画を当たり前のように読んでるのは腹立つが、まだいい。問題は私の背中を背もたれにしてゲームをしてるこいつ。ただでさえ今日は暑いのに、こいつの体温自体も高い所為で私の背中は灼熱地獄。離れても離れても、また背中をくっつけてくる。金魚の糞みたいに。私の背中だけ異常な量の汗が出てるのをこのチューリップ野郎は気付いてるのだろうか。


「確かに今日は暑いなー」ふーと言いながら、Tシャツをパタパタしてるチューリップ野郎。こいつ…。「私は暑 苦 し い ん だ け ど」「良かったな、それはお前だけだぞ」なんて言ってけらけら笑ってるチューリップ野郎。


「てめーコラ。私は誰かさんの所為で暑苦し「俺の所為じゃねーぞ」どう考えても晴矢の所為でしょうが!」
「あ゛ーもう!さっきからうるせぇんだよっ!って、あ゛あ゛あ゛あ゛あ"てめえの所為でラスボス倒す前に死んだじゃねーかあああ!」


悲鳴に似た怒鳴り声をあげながら振り返り、私の胸ぐらを掴んで来る。「んなの私は関係ないじゃんか!それに晴矢が弱いから死んだんでしょーが!」私も怒鳴りながら晴矢の胸ぐらを掴み返してやる。


「俺は弱くねぇ!」
「嘘付けっ、私に勝てない癖に!」
「あれは手ぇ抜いてやってるだけなんだよ!」
「何おぅ!」


ぎゃーぎゃー言い合いをしていると、横目で見ていた風介が痺れを切らしてノーザンインパクトを食らわしてきた。「ってめえ!何すんだよ!」「酷いよ風介!」「2人共暑苦しいんだよ」そう言う風介の眉間には、これでもかってくらい皺がくっきり付いている。そりゃあもう木彫りみたいに。


「晴矢が暑苦しいのがいけないのよ!」
「はぁ?!お前の方が………なんか涼しくね?」
「あ、確かに…」
「そりゃあノーザンインパクト食らえば涼しくもなるよね」


扉の方から声がして、後ろに振り返ると呆れ顔のヒロトがコンビニの袋を持ってこちらに歩いてきた。「あ、ヒロトお帰り」「ただいま名前。アイス買ってきたよ」そう言ってにっこり微笑みながらコンビニの袋を見せてくる。いや、それより何故こいつは当たり前のように私の部屋に帰ってくるんだ。…まあでも、アイス買ってきたからよしとしようじゃないか。


「おお!さすがだなヒロト!」「ずいぶん気が利くじゃないか」アイスに釣られて機嫌が良くなる晴矢と風介。「何言ってるの晴矢と風介の分はないよ?」「んなっ?」「私まで?!」「うんっ」楽しそうにニコニコ笑いながらガリ●リ君を食べるヒロトと、落胆してる晴矢と、落胆と動揺を隠せない風介。風介はどんまいだが、晴矢はざまあ。


「…あれ?このアイス」ふと、自分のアイスが半分に出来るやつだと気付く。ちらっと晴矢と風介に目をやれば、物欲しそうな顔でこっちを見ていた。まるで犬みたいに。今日暑いしなぁ…よし!


「はい」
「あ゛ー?」
「ん?」
「食べないの?アイス」


半分にしたアイスの片割れを、晴矢と風介に渡せば嬉しそうにアイスに飛び付いて来た。ほんと犬みたい。


「サンキュー!」
「ありがとう!」
「はいはい」
「あー名前何であげちゃうのさー」つまんないと言いたげな顔をしていうヒロト。つまんなくて結構。


「だって今日めっちゃ暑いし」
「風介は涼しそうじゃないか」
「でも晴矢は暑いじゃん」
「もう名前はお人好しなんだから。まぁ円堂くんほどじゃあないけどね」
「さいですか」


なんてヒロトの惚気を聞き流してたら、いつのまにか喧嘩が始まった。


「おいっ!風介お前さっきから食い過ぎなんだよ!」
「貴様だって食い過ぎなんだよ!せっかく名前がくれたのに!凍てつく闇で凍らせてやるっ!」
「っんだと?!ならこっちは紅蓮の炎で焼き尽くしてやるっ!」
「凍てつく闇の冷たさを思い知るがいい!」


シャクっ。決め台詞を吐いたと思ったら、無残にもアイスのほぼ半分は風介の口の中へ消えた。


「あ"あ"あ"!?ってめ何してんだよ!」
「ふるふぇい」
「おいこらてめえ表出ろやあああ!!」
「黙らっしゃいっ!」


ばこんっ。スリッパで晴矢の頭を殴ってやれば良い音が鳴る。犬同士の喧嘩みたいにキャンキャン吠えやがって…五月蠅いのよ。


「痛ってぇな!何しやがる!」
「あーあせっかく私のアイスをあげたのにそんな言い方するんだ?」
「……す、みませんでした。でも俺悪くねーし!風介がいっぱいアイス食うから悪いんだ!」
「なんだとっ?!」
「分かったから、もう黙れお前ら」


そう私が言えば、まだ文句を言いたげな顔しながらも一応黙る2人。「なんか名前2人の飼い主みたいだねっ」きゃっきゃっ笑いながら阿呆な事を吐かしてくるヒロト。


「こいつらの飼い主なんてこっちから願い下げよ」
「俺は犬じゃねえ!」
「私は犬じゃない!」
「あははっ遠吠えしてるよっ」


腹抱えて笑ってるけど君も十分犬だよねヒロト。…この3人の飼い主なんて嫌だけど、野放しにしてたらそれこそ何しだすか分からないから私がちゃんと面倒みなきゃ駄目なんだろうなー…。そう考えるとめんどくさ。


「なぁ名前ー」
「んー?」
「俺を構え」
「は?」
「名前!私も構え」
「は?」
「じゃあ俺もっ」


いやいや構えと言われましても。でも3人共の頬がほんのりと赤くなってて何だかそれが可愛くも思えて構ってやりたくなった。うん、意外と飼い主でも悪くないかも知れない。


「よし、じゃあまずは首輪を付けてみようか」


20100713


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