「晴矢ー明日デートしようよー」
「おー」
「どこ行くー?」
「おー」
「…」


さっきからずっとこの調子。晴矢はいっつもそうだ。マンガ読み始めたら周りの声が頭に届いていない。適当に相づち打ってるから私が話した内容なんて聞いちゃいない。彼女がせっかくデートに誘ってんのにこれだもん。仕舞には「ぷぷっ」とか言って笑ってるし。
今日程こいつを殴りたいと思った日は初めてだわ。風介の気持ちが良く分かる。身に染みてくるよ。


「ねーねーはーるーやー」
「そこでその技は不味いだろ」
「禿げろうんこ」


今私の中で殴りたい気持ちから殺人衝動にがらりと変わったよ。だって、人が呼んでんのにそれに答える訳じゃなく、マンガに反発するとか信じられない。私よりマンガかよ。神経いかれてんじゃないの。もういいよ拗ねるからね、私。



「ふー読み終わったー。今回は読み応えあったなー。名前も読む?」
「…いい」
「そ」


何が「名前も読む?」だ。
私の事適当に扱った癖にしてそれの謝罪の言葉も無いなんて…。マジで神経いかれてる。きっと晴矢の神経ボロッボロよ。私には見えるわ。


「名前ー」
「…」
「なに拗ねてんだよ」
「何のことだか存じ上げません」


気の抜けた声で私の名前を呼びなから後ろから腰に抱き付いてくる晴矢。その行為に頬が弛みそうになったけど、それを制止してあくまでも拗ねる。すると苛ついたのか「ちっ」と舌打ちしてから顔を引っ張られ横向きにさせられる。


「な、何よ」
「んな、拗ねてっと、」
「?」
「ベロチューすんぞ」
「ばっ、馬鹿!」


こいつは何をそんな恥ずかしい事を、そんなどや顔しながらさらっと言うのよ!発言はともかく、その顔にムカつくけど不覚にもときめいてしまった自分が居るのがなんとも情けない。


題:確かに恋だった
20100811


「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -