私は同じクラスの不動明王が嫌い。あの言動、態度、目付き、喋り方。すべてが大嫌い。


「小鳥遊」


そのぐぐもった喋り方で他の人の名前を呼んでから、私の名前を呼ぶ。


「名字」


止めて。他の人の名前を呼んだ口で私の名前を呼ばないで。厭なの。嫌いなの。お願い止めて。


「聞いてんのかよ」
「…聞いてますけど」
「なら返事しろよな」
「何?」
「別に」


なら呼ばないでよ。あんたなんか嫌いなのよ。お願いだから私に関わらないで。


「名字?」


五月蝿い。嫌いなの。あんたなんか世界一嫌いなの。


「あんだよ。随分としおらしいじゃねーか。あ?」


止めて止めて止めて。その目で私を見ないで。その目に私を映さないで。


「…何で泣くんだよ」


私だって知らない。泣きたくて泣いてる訳じゃないのに、勝手に涙が出てきて流れていく。ただ、ただ流れていくだけで悲しいという気持ちはなくて、…苦しいんだ。不動の所為で体が苦しくておかしくなりそう。不動に体がどんどん蝕まれていく。


「名前」
「もうっやだ…嫌だよお…っう…ひっく、」
「はあ?」


子供みたいに嫌だと言って泣いてる自分が情けない。


「何が嫌なのか知らねーけど、とりあえず泣くなって」


今までに見たことの無い優しい微笑みで私を慰める不動が私は心底嫌だと思った。だってあんたはその顔を私以外にも見せてるんでしょう?


知らなければよかった
(大嫌いな不動が好きだなんて)


題:確かに恋だった
20100810


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テーマ「人外ファンタジー」
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