「人間は愚かで滑稽な生き物だな」


そう言って苦笑するあなたが、私にはよっぽど愚かで滑稽に見えた。でもそんなあなたが好きな私も愚かで滑稽なのだろう。


「…私は人間が嫌いだ」
「存じております」


ああこの人はやはり愚かだ。恐らく自覚はしていないだろうけど、この人は人間が愛しくてたまらないんだ。なのに否定し続けている。嫌いだと言うこの人が一番人間を愛おしく思ってるのに。何をそんなに否定する意味はあるのだろうか?人間を見てるあなたの眉間には皺が寄ってはいるものの、とても穏やかな顔をしている。私はこの人が人間が嫌いなのは知ってる。けど、嫌いな理由は知らない。


「ガゼル様は何故人間がお嫌いなのですか?」
「それを聞いてどうする?」
「いえ、別に」


そう私が問えば心底嫌な顔をし、睨まれてしまう。


「私は嫌いなんだ…」


この人は本当に不思議な人だ。嫌いなら嫌いで関わらなければ良い。それなのに、この人の視線の先にはいつも人間が居る。今だってまるで自分に言い聞かせる様に嫌いだと言う。


「…名前は人間が好きなのか?」
「好きではありませんが嫌いでもありません」
「…随分…曖昧だな」


あなたの方が曖昧でしょう?と、つい言葉が出てしまうかと思った。


(あなたが嫌う人間は、私達そのものだと言う事にあなたは気付いてるのだろうか)


20100730


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