お祭りわっしょい!

(※長い)


鈴虫が鳴り、ガヤガヤと人が賑わう声が耳に届き、夜風が暑く火照ってる体に当たり心地好い。焼き鳥の匂いが鼻を掠めてお腹を空かせている私達のお腹が更に空いて悲鳴を上げている。
私は今、日本に遊びに来てるマークとディランと盆踊りに来た。本当は来る予定はなかったのに、ディランが何処からか今日盆踊りがある事を知って行きたいとごねるから観光も兼ねて来たのである。


「名前ユカタ似合ってるね。」
「ありがとう。」
「ちょっとマーク!ミーが一番に名前に言うつもりだったのに!」


やめてよね、ぷくっと頬を膨らませて怒るディラン。本当は浴衣着たくなかったのにな。元はと言えば、ディランが名前ユカタを着てよ!、と言わなければ着なくて済んだのに。まあ、その代わりにマークとディランに甚平着てもらったから良いけどさ。


「名前!すっごい可愛いよ!」
「ディラン声がでかいよっ。」


周りの人の視線が凄く恥ずかしい。あらあらカップルかしら、とか初々しいわねー、と言う声が聞こえてきて私の羞恥心を更に煽る。


「名前綺麗だね。」
「ちょっ、」


マークは何を思ったのかディランに対抗して私にそんな事を吐かしてくる。私が恥ずかしいのが嫌いなのを知ってる癖に、あんにゃろう。


「待ってよ!マークは名前にそんな事言っちゃダメ!言っていいのはミーだけなんだから!」
「違うよ、俺だけが言っていいの。」
「2人とも黙って!」


襟元を掴んで言えばジョークさ、ってマークが爽やかに言ってくるのが無性に腹が立つ。ディランは気にもしてなく、ねえミーあれ食べたい!と言って私の手からあっさり逃げ出し行ってしまう。


「こらディラン!」


マークと一緒にディランの後を追えば、ディランを目を輝かせながら何かに食い付いていた。


「名前これなに?」
「綿飴だよ。」
「ワタ、アメ?」
「そう、綿飴。食べたいの?」
「うん!」


私と会話しながらも目線は綿飴を作ってる作業に釘付け状態。マークも綿飴がいるのか確認するのに、マークに目線を移したらこれまた彼も目を輝かせていた。


「マークも欲しい?」
「うん。」


マークにも可愛い一面があるのね。2人に綿飴を買い、私はかき氷を食べる。満足そうな2人を見て、私も満足してしまう。


「名前それ美味しい?」
「美味しいよ。」
「ミーに一口ちょうだい!」
「しょうがないなー。」


ディランに一口かき氷をあげれば、今度はマークが一口ちょうだい、と言うからあげる。また満足した2人を見ると頬が弛む。












太鼓の音が鳴り響き、この祭りのメインの盆踊りが始まる。最初、太鼓の音で2人は吃驚していた。


「名前、まさかこれから戦争が始まるんじゃ…。」
「始まりません。」


戦争ってどんだけ吃驚したんだか。次々と団体で踊る人達が、自分のポジションにつく。そして、ちょっと経ってから曲が鳴り出し、アナウンスが流れる。
小さい子供達が団体の人達と一緒に踊りだして盆踊りが始まる。2人に目をやれば、予想通りにまた目を輝かせていた。


「名前!」
「んー?」
「すごいね!」
「そうだね。」
「よし、ミー達も踊ろうよ!」
「え、ディラン?」


腕を引っ張られ、半ば強引に踊ってる人達の横に連れていかれる。ほら、と言いながらもう踊り始めてるディラン。その姿はとてもぎこちないけど、凄く楽しそうなのは見て取れる。こんな姿を見て踊らない訳にもいかず、私も踊りだす。


「えんやぁーこぉーらぁやっさ!!」


ノリノリになってきたディランが、曲に合わせて自分が分かる日本語の部分だけ歌い始めた。おかしいな。演歌なのに、ディランが歌ったら洋楽に聞こえてくるよ。やっぱり外人なだけあって発音が良過ぎる。


「ほらほらマークも!」


大声でマークを呼び付ける。ったく。…しょうがないな、と言いながらもこちらに来てマークも踊った。



お祭りわっしょい!

(今日みたいにこんなに楽しいお祭りは初めてだ。)



長いですね…。
20100818.久保田


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