ふわり、ふわふわ。
身体が軽くて、まるで宇宙空間に居るような感覚がする。目を瞑っているから此処はどこか分からないからもしかしたら本当に宇宙かも知れない。それは流石にないか…。なんて阿呆な考えをしていたら甘い匂いが鼻を掠めた。なんだろ…甘い匂いがする。
すかさず辺りの匂いを嗅いだけども、これが何の匂いかは分からない。どこかで嗅いだ事のある様な無い様な匂い。


「うわぁ…」


今まで瞑っていた目を開けば、桃色をした雲が幾重も幾重も重なりどこまでも続いている景色が目の前に広がった。…凄いなぁ……にしても此処はどこ?呆然と辺りを見回してもこれと言って目立つ物など無く、やはり此処がどこかは分からない。あるのは、普通の人が食べる様な大きさでは無い程大きいクッキーやキャンディーやマカロン。至るところにカラフルなお菓子がある。
甘い匂いの正体はこれらだったのだろうか。


「…あ」


何かが遠くで動いている。目を凝らして見てるとその物体が何かぼんやりとだか分かった。モヒカン…?そう見えたのはモヒカン。あれは絶対モヒカンだ。だが、しかし何故モヒカン?こんなに可愛い空間にどう考えても不釣り合いなモヒカンがこちらに近付いてくる。…まさか…モヒカンって、「不動…くん…?」モヒカンが徐々にこちらに近付いてきてはっきりと分かる人物。あれは絶対うちのクラスの不動くんだ。でも、その不動くんの頭にモヒカンだけじゃなくて白いふさふさの長い耳が生えている。う、うさぎ?服は、黒い燕尾服に青色のサルエルパンツ。それに青色の大きい蝶ネクタイしてなんだかお洒落。なんとなく可愛くも思える。
何してるんだろ?私の存在に気付いて居ない不動くんはポケットから懐中時計らしき物を取り出して時間を気にしてる。


「ちっ…時間がねえな…」


どうやら急いでるみたいで、時間を確認するや否や走りだした不動くん。此処がどこか聞く為に「不動くん!」と名前を読んでみたけど振り返りもしない。あれ、気付いて…ない?結構大きい声で呼んだのに気付いかないとは…。あのうさぎの耳はなんの為の耳なんだろうか。それとも、私の存在自体が彼には見えてないのだろうか。
とりあえず追い掛けなきゃ!不動くんを追って私も走りだす。


20101103

第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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