蔵の外

俺は…ずっと蔵の中にいた。
蔵に近づいた小鳥さえ死んでしまう、霊力。

そんな時審神者が手を伸ばし「蔵から出ておいで」といって俺は手を掴んだ。

久々の外だった。光が眩しい。そして目先に綺麗な銀髪の長い髪の男がいた。
その男は俺の気配に気づいて後ろを振り返ると俺の方に近づいてきた。

「おや?新人さんですか?私は小狐丸と申します。」丁寧な紳士的な口調で挨拶をする。

「俺は大典太光世。よろしく」
「大典太殿、こちらこそ」と手を差し伸べた。
握手…と意味なのだろうか?霊力の俺が怖くないのか?

「おや?人見知りですか?」クスッと笑みを浮かべて小狐丸というやつは「ではまた」と言って去っていった。

ここの本丸には色々な人がいた。
前田、平野、三日月、数珠丸等様々な刀がいた。慣れないまま数日が経った。

「大典太殿、まだ緊張しておりますか?」聞きなれた声。振り返ると後ろに小狐丸がいた。
「俺なんか、周りと溶け込んでもいい事あるまい。」
「そんなことはありませんよ、散歩でも致しましょうか。」

先にスタスタ歩く小狐丸、俺は何となくついて行ってしまった。
「大典太殿、ここが我が本丸の桜の木ですよ。」
時期は冬。綺麗な雪が積もり桜の枝にも少し積もっていた。

「おや?あそこに小鳥がおるなぁ…」小狐丸がいう。
「おいで」と小狐丸が呼ぶと素直に小鳥は小狐丸の手に乗った。

「まだ、苦手ですか?小鳥は。」そう俺に小狐丸は言った。
「知ってるのか。」
「まぁ、お聞きはしていました。」
「なぜ、俺に構う」
小狐丸はクスリと笑って言葉を発した。
「仲良くなりたい、とおっしゃったら変ですか?」と言いながらヒョイっと俺に近づいてきた肩に小鳥を乗せた。

「や、やめろ!死んでしまうっ…!」と言ったら小鳥は肩の上でピヨピヨと鳴きながら跳ねている。

「大丈夫でしょう?貴方の霊力は確かにあるかもしれない。けれど、それは蔵の中での出来事。外に出たら逃げる小鳥もいますが、逃げない小鳥もいる。それは刀だろうと、動物だろうと同じでは?」
そんな事を言いながらクスクスと笑う小狐丸。
「そういえば、前田殿も大典太殿と仲良くなりたい、と言っていましたよ。少し、視野を広げてみたらどうでしょう。」

不思議な男だ。小狐丸は。確かこいつは、狐が手伝ったから出来たと言われる刀。
だから俺に恐れないのか。

「次は前田殿に本丸を案内されてみては?」
「そ、そうだな。」
「私はここにきた大典太殿を恐れませんよ、きっとみんな。」
力強くそして優しい笑みを浮かべて俺にそう言った。

この小狐丸が言うなら信じてみてもいいか。
みんなと仲良くなる、のは時間が掛かるかもしれないが…。

「帰りましょうか、話し込んでいたら少し寒さも出てきましたね。」
「そうだな。」

2人肩を並べて歩いた。誰かと肩を並べて歩くなんて久々だ。そして相変わらず小鳥は俺の肩にいる。

俺は思わずフフっと笑った。

「きっとその笑顔を前田殿がみたら喜びますよ」と一言小狐丸がいう。

時間は掛かるだろう、でも、すこしだけ、距離をみんなと縮めたら俺も変わるかな。



END

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