囚われた鳴狐

闇落ちした鳴狐です。大前提で、検非違使に囚われてしまって検非違使になってしまった鳴狐の話。

大丈夫な方はスクロールしてお読みください。































暗い暗い底にいた。ああ、僕はどうしてここにいるんだろう。
ここが、もうわからない。そうだ。囚われたんだ検非違使に。そして、僕は検非違使となった。

黒くなった目、牙の生えた歯、隠すようにマスクを被る。
いつか戦わなくてはいけない元仲間達。

そしてその日がきたんだ。

激しい乱闘が続いた。刀は折れてない。みんな重症で動けない、残ってるのは一期だけ。

「…ねえ!!いち兄!あれって鳴狐じゃない…?」僕の一撃で重症を負い、倒れ込んだ乱は悲しい目でぼくを見る。ぼくは囚われてしまったんだ。
戦いたくなどない。殺したくない。
でも、救われる道はないんだ。

「乱。落ち着こう。もう、鳴狐は検非違使だ。敵だ。倒さなくてはならない。」
一期はそういって強く僕を睨んだ。ぼくをみないで。

そして一期、僕の兄が僕に刀を向けた。
「鳴狐。もう、敵だ。殺す、までだ。」
覚悟はしていた。言われると悲しいかな、少し。

「…かつての兄よ、死んでもらう」

互いの刀がカキン!カキン!と音を立てる。
さすが兄…強い。

お互い肩を揺らして息を切らしている。
一期は袖で口元を拭った。僕も釣られて口元を拭った。

「鳴狐、弟達をこんな目に合わせてのを許さない!」
力強くそういい放ち、僕を睨む。
と、同時に一期は刀を捨て素手で僕に襲いかかってきた。
シュッと僕は避ける。

「なぜ…刀を持たない、殺すぞ」
一期は問に応えなかった。
すると僕の胸にす…っと手が入っていく。

「鳴狐、お前を殺すわけがない。守るためだ。そして連れて帰る」
一期の手が僕の胸に入った時、すぅ…っと黒いモヤがでてきた。
少しずつ目の色が変わる、牙もなくなる。

「鳴狐、お前が囚われたのは私の責任です。だから連れ戻しに来た。」
僕は涙がつー…と頬をつたわって一期にもたれかかった。

「ご、めん」
「謝ることは無い。みんな無事だ。帰ろう、主殿のところに。みんなのところに。」

そういって一期は僕を担ぎ、重症を負ったはずの乱は元気に立ち上がった。
「なーんてね!演技だったんだよ!鳴狐!おかえり!」そういってキラキラした笑顔を向ける。

ああ…僕は粟田口の兄弟でよかった。

そうして僕は元いた本丸に戻った。
みんな、検非違使になった僕なのに温かく迎えてくれた。

「おかえり!鳴狐!」笑顔の乱。
「まーったく、囚われんなよ」と呆れ顔の薬研。
「ほら、手当してやるから来いよ」と僕に手を差し出して、僕はその手を掴んだ。
「鳴狐…おかえり」そう小さく僕にしか聞こえない震えた声で言い放った。

「…みんな、ただいま」
「やぁやぁ!これなるは!鳴狐がお戻りしましたぞ!今夜は宴ですな!」
お供の狐も元気に喜んでいる。

幸せだ、僕は。たくさんのごめんと、いっぱいのありがとうをこめて。

「本当にもうどこにもいかないよ、ただいま。」
遠くから聞こえる。

「囚われたらまた私が助けに行きますよ、鳴狐。でも、もう囚われることさえ私がさせませんから、安心してください。」

いち兄、力強くてかっこいい、いち兄。
ありがとう。みんなただいま。

END

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