神隠し

神隠し 亀甲貞宗

僕は亀甲貞宗。みんなにはドMって言われてるけど、ご主人様だけなんだ。

今日は心地いい夜風だ。僕は奥の襖をそっと開けた。
中にはご主人様がいる。

「どうしたの?亀甲さん。」
そうやって相変わらず優しい微笑みを向けながら僕をみる。
ドM?ドMってドSを知ってるからなれるんだよ。
ああ…ご主人様を独り占めしてしまいたい。

「ご主人様、誉を取ってきたよ!」
「あら、いいこね。何して欲しい?」
「撫でてよ!」
ご主人様の手が僕の頭に触れようとした時、

「主さまー!」乱の声が聞こえた。心の中でチッと舌打ち。

「乱ちゃんどうしたの?」ここでもご主人様は優しい笑みを向ける。
ああ…僕だけのご主人様にしたい。

「遠征大成功したよ!褒めて!」乱の声が響く。僕の中で何かが崩れる。崩れそうだ。

「そうね、褒めなくてはね。でも待ってね。亀甲さんを先に褒めてあげなくちゃ。」
ああ…ご主人様、きっと僕が先に来たから順番なんだね?早く僕のモノにしたい。

「わかった!じゃあまた後で来るね!」乱がそう言って去る。

「ご主人様、僕のモノにならないかい?」
この時もう僕は独占欲と嫉妬で狂っていたんだ。
「何を言ってるの?亀甲さん…」
「ご主人様を独り占めしたい。僕だけのモノに」
そう言って僕は本来の姿、刀になる。
「ちょ…ちょっと…!亀甲さ」
そうしてご主人様は僕の刀に貫かれた。
ゆるりとスローモーションのように倒れた姿も美しかった。
ご主人様の血は美しくとても美味しい。

そして刀から戻れない僕は血塗れのご主人様の横にゴロン…と刀が転がった。

ご主人様…もう僕だけのモノだよ。ずっと一緒だ。
最期に目を写したのは僕。口を聞いたのも僕。命を頂いのも僕。

ずっと僕だけのご主人様だよ。あの世でもね。



「いち兄!!起きてくれよ!!」
薬研が慌てて起こしに来た。
「ん…どうした?薬研」
「大将が!亀甲が!いないんだよ!奥の襖にも!血だけ残って姿がどこにもないんだ!2人の姿!」慌ててまくし立てるように薬研が言った。

私は悟った。亀甲が神棚に連れ去ったんだ、と。異常なまでの嫉妬深さ、そして独占欲。いつかするのではないかと思ってはいたが…。

「薬研、落ち着きなさい。主様と亀甲貞宗はもういなくなってしまったんだ」
「え…?」薬研は時が止まったかの様な顔をして不安そうにしていた。

「大丈夫だよ」そう言って薬研の頭を撫でる。薬研、泣くな。
俺達…どうなるかな。守らないと、みんなを。

END


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