企画ドリーム | ナノ



【小狐丸】byちゃーこちーこ

ふわりと風が頬を撫でる。温かいような寒いようなぬるま風。
まるで何かが来そうな気配。

ここはどこ?…そう考えると私はわからなくなってしまった。
夜の竹薮の中、1人不安になりながら歩く。

シャリ…シャリ…
足が地面を踏む度に枯葉が潰れる音がする。
耳障りなような心地いいような微妙な感覚だ。

気づくと上から月が見えていた。あ…今日は満月だ。満月って綺麗だけどとても不気味。そして、狂気的に感じる。

「お嬢様」ふと後ろから声をかけられた。
おかしい。人の気配なんてなかったのに。

「お待ちしておりました」
怖くて後ろを振り向けない。お待ちしておりました?なぜ?誰を?私を?

おそる恐る、振り返るとそこには、綺麗な銀髪の長い髪を風に靡かせ、怪しい赤い目をした美しい狐の様な外見の男が立っていた。月の光に浴びせられて銀髪は輝いている。

「あ、あなたは?」私は振り絞るように声を出した。

「私は小狐丸と申します。そしてあなた様を迎え入れるために、あなたは私に神隠しをされたのです。」

神隠し…?昔から伝わる神隠し。神に人を隠されるって…。

「そしてあなたは審神者になっていただきたい、そう私のぬしさまに。」
「審神者…とは?」
「簡単に言えば、歴史を守る為に刀剣男士を操る人を審神者と言います。それは人間しかできない。そして、あなたが選ばれしもの。だからここに連れてこられたのです。」

そうか。私が選ばれたのか。だから、いきなりこんな竹薮の中に連れられたんだ。
彼の目には力強いものを感じる。思わず目の中に吸い込まれそうだ。

「私で…よろしいのでしょうか…?」
どうせ、帰り方などわからない。もしかしたら帰れないかもしれない。選ばれしものならば、それをやり遂げないと。

「ぬしさま、あなたは選ばれしもの。ですから、私たちを救うのもぬしさまです。封印された刀を救ってください。私はぬしさまをお迎えするためにこのような姿で来ました。」
「封印された刀…?」
「封印された刀を救わなければ歴史が変わってしまいます。そして、封印された刀を解いて、歴史を救うのです。まずは、刀の封印を解いてください。救うのです。」
そう彼はなだめるようにそして力強く私に伝えた。

きっと彼は歴史を守りたいのだろう。封印された刀も歴史も救いたいのだろう。彼の気持ちは十分伝わった。
何も出来なかった私。何も希望を持てなかった私。私に出来ることがある。

「私は…あなたに…いえ、その他の刀方にも必要とされてますか?」
「ええ、とても。特に私は必要としています。」
そう優しい口調で私に手を差し出した。

「ぬしさま、あなたがこの手を取ったら審神者になります。手を取りますか?」
と何か確信を得たように微笑みながら。

その差し出された手に自分の手を乗せた。

「はい。あなたのため、いえ、刀方の為に私も戦います。」

触れた手は少し冷たく、温めてあげたいと思った。
そして視界は暗くなった。


「ぬしさま、ぬしさま」
「はっ!」
小狐丸の声で目を覚ました。いつもの私の日課だ。

「何か良い夢でも?」にこやかに話す小狐丸。でも目は少し不安そうに。

「ええ。昔をあなたとの出会いを夢で見たの。不安にならないで小狐丸。」そう言って私は相変わらず毛並みのいい髪を撫でる。
小狐丸は、気持ちよさそうに目を閉じた。

そっか。この時からか。小狐丸に恋をしていたのは。
この小狐丸、いえ、刀達を守る為に私は今日も仕事をするかな。

「おはようみんな」

END

<< >>

back
5


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -