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【秋田藤四郎】by誠の旗


「主君の為に、頑張ってきますね!」


とある僕が、そう言った。




ここは、時の政府が運営する施設。
あらゆる本丸の審神者、刀剣男士達が集う場所
万屋、茶屋など様々な建物が並ぶ。

そして、何より
賑わっているのが、演練場

各本丸同士で技量を競い合う
それが、演練


目の前の僕、秋田藤四郎は
どうやらカンストしているらしい。
目をキラキラさせて、自信に満ち溢れてる
そんな感じだ。



「あ、もしかして次戦う本丸の僕ですか?
極なんですね!いいなぁ、かっこいい」


無邪気な笑顔を向けてくる僕に
少し苦笑を浮かべる。

僕は、つい先日極になった。
前の主君と向き合い、己と向き合い。
そして決めた覚悟。

修行は、はっきり言って辛かった。
生きて主君の元へ帰れるか分からなくて、不安で泣きたくて押し潰されてしまいそうなものだった。


どんなに、賢くても
前の主君のように、全てを奪われてしまえば人間なんて直ぐに壊れてしまう。

昔の僕は己で作った人形に、話かけるあの人を見て悲しく思った。思っていた。
僕は、人間の残酷な部分を知り
この目で見てきた。



《〇〇国、No.××。〇〇国、No.××。お入りください。》


無機質な放送が流れる。



「はいはーい、何のお仕事ですか?」


何時もの台詞を呟きながら、架空戦場という場所に足を踏み入れる。

遠くに先程の僕がいるのが見える。


前の主君に

己の過去に

今の主君に


向き合って、進もうとしない

そんな僕に負けてたまるものか。



僕の願いは



ただ一つ




「今の主君を、例え己が折れようと守り抜いてみせます。だから、僕は僕に絶対負けません。」


隣に居た、いち兄が嬉しそうに背中をポンポンと軽く叩いてくれる。

いち兄を見て、頷きあった後
相手を見据える。




開戦の法螺貝の音が鳴り響く。


それと同時に、踏み込み前へと駆け抜ける。


「遅いっ。てぃ!」
「こう来て…そう!そこです!」


声を張り上げながら、自らの短刀を振りかざす。

どれほど時間が経っただろうか

気が付けば、演練は終わっていた。

勝敗は
こちらの勝ち
勝利Aだそうだ。

地面に膝を付き、悔しそうに項垂れてる僕の前に立ち
見下ろす。

「そっちの秋田藤四郎(ぼく)…早くあの人と、今の主君と、そして己と向き合って下さい。他でもない、今の主君の為に何が出来るのか考えて。そうすれば、もっともっと強くなれる。粟田口の年少として、守られるのではなく、僕自身が皆を守るのです。


僕は、修行に出て
強く強く、思いました。


“あぁ、強くなりたい”と。」



そして、帰ってきた。

今の主君の為に



主君に教わって折った紙飛行機

それに紅葉を挟み、あの人へ送った。

あの人が読んでくれてるか、見てくれたのか

それは分からない


刀剣男士となり付喪神となり
肉体を得て感情を得た。

昔は、守りたくても、話しかけたくても
ただの物でしかない僕は、自ら守る事も
苦しむあの人に話かける事も出来なかった。

それが、どんなにもどかしくて
辛い、そんな思いを募らせていた。

でもどんなに、変えたい過去でも
変えてはいけない。

それでも
だからこそ、今の僕が出来ること


それは




自分自身が信じる
今の主君を
1刀剣男士として
守り抜くという事




「主君のご命令とあらば!」


何でもしますよ!


貴方の為になるというのであれば…

この秋田藤四郎、貴方を全力で守ります。

ね!愛しい愛しい我が主君様。



END

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