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【鳴狐】by誠の旗


とある本丸



とある晩


「…だれ?」
「………。」


とある一室


「鳴狐?なんで此処に?」
「…夜這い」

とある審神者と
とある刀剣男士。


審神者を押し倒し、獣の如く欲に渦巻く瞳で審神者を見つめる。
刀剣男士の名は…鳴狐

いつも共にいるキツネの姿は無く、何より常時付けている仮面も付けていない。
いつもと違う姿、大人っぽく見えるその表情に審神者はドキッとしていた。


「最近…嫌な夢を、ミる」
「嫌な夢?」
「そう、主が他の刀剣男士ばかりを可愛がる夢」


何時もは、殆ど喋らない鳴狐が、流暢に喋る事に少し困惑を覚えるが、合わさった瞳は逸らせずそのまま、見つめ合う。


「主…僕、本当はね。このまま主を殺してしまいたい。」
「…なっ!?」
「それか、他の刀剣男士を折ってお供のキツネも殺して、主と二人だけになりたい。」


とんでも無い事をツラツラと言ってのける鳴狐に対し審神者は冷や汗を流す。
鳴狐はふわりと微笑む


「そうすれば、僕を…いやオレだけをみてくれるんじゃないかって考えたんだ。主はどう思う?」
「…つまり」
「うん…主を好いてる。主が、他の刀剣男士と話したり、お供のキツネと仲良く話してるのは嫌い。イライラする。こんな事を言う僕は嫌い?」


もしかすると、鳴狐というのは
刀剣男士の中でも黒い感情をひたすら隠して生きているのではないか。
お供のキツネがよく喋り、本人は喋らないのは。それを隠すため、嫌われない為なのだろうか。
そう、審神者は考えた。
それでも、なお隠せられなくなった。人という肉体を経て、心というものに不慣れな彼ら付喪神は。時として暴走する。それが、今なのだろう。

心というモノを、恋心というモノを
その反動を、教えてこなかった、そのことを恥じる。


「わかった…鳴狐は二人だけになりたい、それに間違いは?」
「ないよ」
「…君をそんな感情にさせてしまったのは、私の責任だ。……“ ”だ」


真名を呟く。それは即ち、全てを捧げるという事。
鳴狐の瞳が揺らいだ。驚きに満ちたその瞳にクスッと笑った。


「…いい、の?」
「覚悟はした。鳴狐、君に全てを捧げる。向こうへ連れてくも、此処で殺すも好きにしてくれ。」
「ありがとう、ごめん、ね?」


鳴狐の頭を撫で引き寄せる。
甘えるように、すりよってくる彼に
自然に頬が緩んでしまうのがわかった。

審神者は鳴狐に一つ口付けを落としてから


「鳴狐?実はね、審神者も君の事を好いていたんだよ。知らなかっただろう?だから、君になら全てを捧げられるんだよ…君だけになら、ね」


さて、行こうか
と審神者は呟く、鳴狐も頷き手を引く


とある本丸
とある晩
とある一室

とある審神者と
とある刀剣男士が


突然、姿を消した。
何故かお供を残したまま

でも、お供は喜んだ。
彼の気持ち彼の淀んだ黒い感情を知っていたから。彼は晴れ渡る空に向かい


「鳴狐、幸せになるのですよ!!キツネめは、此処で静かに祈っておりまする」


そう、小さく呟いた。

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