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【小狐丸】byちゃーこちーこ

「ぬしさま?」
コンコンと襖を軽く叩いて開けようとした小狐丸を「まだ、だめよ。着替えてるの」の一言で制した。
私の予想はきっとしゅん…とした顔をしてるんだろうな。と思うと自然にクスッ笑みが出た。

寝巻きに着替え終わってようやく襖を開ける。
「お待たせ。小狐丸」
想像通りしゅんとした悲しげな顔をしながら小さな声で「失礼します」と言って小狐丸は部屋に入る。
「どうしたの?」
「……」問いかけにも答えない。

「ぬしさま、ぬしさまは私だけで充分ではありませんか?」
悲しげな瞳で私を見つめてくる。
どうしてそんなに悲しい顔をしてるの?こちらも悩んでしまう。

「どうしたの?」
毛並みのいい銀髪の髪に指を通しながら聞く。ああ…触り心地がいい。ずっと撫でていたい。
すると小狐丸はようやく安心したかのように顔を上げて言葉を発した。

「ぬしさま、私は不安になるのです。野生ゆえぬしさまを愛しい故に噛み殺してしまいたい衝動がございます。」
「あらあら。どうしたの?物騒な。」
「時折、他の刀剣男士と戯れてると思います。私が小さくあれば、五虎退のように膝の上に乗れたりするのでしょうか?」
「あら、膝の上に乗りたいのならいつでもおいで。」

不安がりな小狐丸。夜になると時々不安になって、こうしてくるのも日々日課にありつつある。
不安になる時は決まって誉を取った子達が褒めに来てー!っていう時とか、レベル上がった時とか、近侍を違う子にした時とか。
まぁ要するに毎日夜な夜な不安になってくる。

「小狐丸、よくお聞きなさい。」
私は声のトーンを落として、そっと髪の毛から手を離し首に腕を回し、抱きしめた。

「あなた、小狐丸は私の最愛の方です。そして他の刀剣男士は皆、私の子供のようなもの。私がいなくては戦えない。当然褒めたりもする。」たしなめるようにゆっくり話す。

「不安になるのもわかります。野生ゆえ、あなたが衝動的に私を自分のもののようにしたくなる気持ちもわかります。」
小狐丸は抱き締められながらゆっくりと頷いている。

「しかし、このように抱きしめて私の口から最愛の方、と伝えたのは紛れもなく小狐丸、あなたにしか伝えてません。この気持ちに偽りはありません。伝わりますか?」
ドクンドクン…自分の鼓動が小狐丸に伝わってしまうんじゃないか…と少し不安になる。

「ぬしさま。今、ドキドキと胸が高鳴っていますね?」
「あ?ばれた?」
小狐丸は私が抱きしめてる腕をそっと離し、自分の心臓に私の手を置く。
ドクン…ドクン…

「聞こえますか?私もぬしさまに胸の高鳴りを感じています。」
「聞こえます。どくん…どくん…っていっております。」
「「同じですね」」2人の声が重なった。
するとふたりは同時にクスクスと笑う、
小狐丸、ああ…生きてるんだな…愛おしいなと思う。

「伝わっています。わかっています。でも、時折、無性に不安にってしまいます。ぬしさまがほかの誰かに盗られたら。気持ちを奪われたら…と。」再び悲しげな顔で必死に話す小狐丸。
その姿をみたら思わず笑みが零れた。
「何故笑うのですか?」
「ええ…病んでる小狐丸、そんなあなたも愛おしいのです。不安になったら、いつでも来なさい。あなたを私は離しません。」
そう言って小狐丸の頬をそっと撫でた。
すると小狐丸はようやく牙を出した可愛らしい笑顔になる。

「ぬしさま、大好きです」
「私もですよ小狐丸」
「毛並み整えてください」
「はい、後ろを向いて?」

病んでる小狐丸は元気になるのも単純だけど不安になるのも単純だ。
どちらも可愛いから許せるけれど。

この笑顔も病んだ顔も守りたいなぁ。

END

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