【加州清光】by誠の旗



我が本丸に


とうとう


冬がやってきた!!



と、皆が浮き足たったのはつい先日

今も、短刀や脇差が庭で雪合戦をしている。

向こうには大きなかまくらも出来ており

毎日楽しそうに走り回る彼らを見ると少し微笑ましく思えてくる。


軒先に座りながら、一人ボーッとじゃれ合う彼らをみていると、暖かい日差しに次第にうつらうつらとしてくる。

軽く目を瞑り日差しを堪能していると

突然近くでカシャッという無機質な音が鳴り響く。

薄目を開けるとそこには、大和守安定が黒い物体をこちらに向けていた。


「…やすさだ?、何やってんの?」
「主に、かめらってのを貸してもらったんだ!」


かめら…?
と寝ぼけた頭でゆっくり考える。
かめらって光景を写し撮るあれだよな…あれ?音鳴って目を開けた時、安定こっちに向けていた…よね?


「え、何。俺を撮った訳?」
「無防備に寝てる方が悪いんだよ、ブース」
「ブスっていう方が、ブスなんでしょ?ブス」


意地悪そうな、笑顔を向けて
ウインクをしてくる彼に
悪態を付きながら。
かめらに収まっているであろう
自分を消す為に追いかけ回す事になった。


「待てって言ってんの」
「待てと言われて待つわけないじゃんー」


数十分後、二人はまだ追いかけっこをしていた。
次第に、他の刀剣達も集まり始め。その様子を見守りながら茶を飲んでいた。


「つ…かまえ…った」
「あーあ、きよ…みつ、しつこい」


捕まえた頃には、かなり息があがっていた。
ハァハァと荒い呼吸を整えていたら、安定がボスッと新雪の雪にダイブしていた。


「ちょっと、何してんの」
「走って暑いから、気持ちいいんだ。清光もやってみなよ」


そんな可愛くない事する訳ないじゃん
といつもなら、軽く返してしまうが
新雪の積もった綺麗な雪を見て、少しウズウズとしてしまう自分がいた。

安定が「やらないの?」と沖田君譲りの子犬みたいな顔で言われて、戸惑う。


「…っ。もう…仕方が無いな」


雪は冷たかった。
熱くなった体を、急激に冷ましてくれる。


「清光、最近寝れてないでしょ?主の仕事の手伝いとかあるし」
「?まぁね、初期刀であり近侍の俺は主に愛されちゃってるから」


急に真面目な声を発する安定に
少し目線をやると、安定はガバッと起き上がり。


「今日、夕方から出陣でしょ?それ、俺が主に頼んで変えてもらったから」
「は?、何勝手な事を…「たまには、頼ってよね!!」…え?」

「清光は、頑張り過ぎなんだよ!」


そう言い、走り逃げていく安定に
一人雪の中に取り残され
呆然とその背中を見つめる。

ふいに、傍に
かめらが落ちてるのに気づく。


「かめらって精密機械じゃなかった?雪の上に落とすとか最低、まぁ丁度いいからさっきの消そ」


かめらを起動し撮った写真を見る
そこには、たくさんの自分の写真が入っていた。
出陣、遠征、演練、主の手伝い、内番
確かに最近は休む暇もなく、寝る時間も少し削っていた。

此処にいる刀剣達が、かめら目線で一緒に写っており。
撮り方からすると、彼らは自撮りのような感じで
遠くで動く俺と一緒に撮っていたらしい。

画像を見ていくと。一つ紙に文字を書いてあるのを撮ったのがあった。




“働き者の、近侍殿へ

いつも、我らを引っ張り出陣、遠征、演練、内番、主の手伝い
ありがとう、だが無理はしていないか?
初期刀として、最初からいる近侍殿からしたら当たり前なのかもしれない。だが、今は我らがいる。たまには、我らを頼ってはくれないか?

一人ではないのだから

本丸一同より


追伸
特に新選組刀…主に大和守が、心配しておったぞ”





この字は三日月さんだ
言葉の回し文句が彼の独特な雰囲気をかもしだしているし。何より達筆だ。下手すれば読めない。ギリギリで読めたけども。


「…そっか、俺一人じゃないのか。」


それは、極々当たり前の事。
でも、すっかり抜け落ちていた。

嬉しい…それが、写真をみて思った事だった。


「何泣いてんのブース」


前を向くと其処には
恥ずかしそうに頬を赤らめて
悪態をつく安定がいた。


「…っなんでもない」


自分が泣いていた事に気づいて
そっぽを向く。


「…と」
「ん?」
「ぁ…りが…と」


チラッと見ながら
熱くなる頬を感じながら
小さな声で言った。


たまには、こういうのも

悪くない。

今日は、安定の言う事を聞こう。


明日からまた、この本丸の為…主の為に頑張れるように


冷たい雪の中から起き上がり、暖かい日差しに向かいググッと伸びをする。
流石に寒いので、着替えがてら湯汲みにいってゆっくり、暖まろう。


「さぁて、明日からまた頑張っちゃおうかなー」


写真を思い出し、フフッと笑いながら
一人呟いた。

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