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嗚呼。
虚しく鳴くな、鴉よ。
我まで悲しくなるであろう。
…一体何時になったら…
闘いは終わるのだ…
小高い丘。
見目19歳程の青年がひとり、空を見上げていた。
青年の顔には、右の額から目を通り頬までの古い傷痕があった。
「三蔵?」
「ん?…あぁ、武尊(タケルノミコト)ですか…」
三蔵と呼ばれた青年は声がした方を見る。
「ボーッとしていたな。己(おれ)の気配にも気付かない程に」
…武尊。
服装から身分が高いことが伺える。
儚げで、いかにも頭脳派の見目をした青年だ。
左頬に不思議な模様がある。
武尊の言葉に、三蔵は右目の古傷に触れながら、やわらかく微笑む。
「ええ…貴方には、この傷も疼きませんからね」
「その古傷が疼いたときは、己が敵になったときであろう」
「ええ、そうですね」
三蔵は再び、儚げに…しかし自嘲気味に、微笑んだ。
武尊は、何かを感じ、振り向く。
「……三蔵、行くぞ、煩い猿が来る」
「猿?あー…ナポ…」
「日本武尊(ヤマトタケルノミコト)!!」「…チッ…来たな猿…」
一人の少年が走ってくるのが見えた。
「猿ではない!ナポレオン・ボナパルトだぁぁあ!」
ナポレオンという少年は、武尊の前に着くなり、ダンダンと地団駄を踏む。
「…暴れるな猿。壁に手をつき、反省しろ」
「仕方無い、壁、壁〜…ってソレ日本猿であろう!」
武尊の言葉に、軽くノリツッコミまでしている。
そんなナポレオンは、見目13〜14歳。
三蔵や武尊の和装とは違い、上品そうな洋服に身を包んでいる。
髪は全体的に黒いが、一部金髪の部分がある。
雰囲気はというと…猿だ。
「…ナポレオン君、急いでこちらへ来たようですが、何かありましたか?」
三蔵がナポレオンの身長にあわせ、中腰で尋ねる。
「三蔵め〜!ちぃと背が高いからって屈むとは…!」
ナポレオンは三蔵の質問などお構い無し。
「猿…貴様はまともに会話もできぬのか…」
武尊は思わずため息を吐く。
「猿ではない!何度言わせるのだ〜!?」
「何度でも言ってやる。猿」
「ぐうぅぅ〜!」
「悔しかったら言い返してみたらどうだ?チビ猿」
「ぐぬぅう!腹黒っ!ぐるぐる模様!」
「腹黒ではない、フッ…己程清い心の持ち主はいない…それに、これはどう見てもぐるぐるには見えぬが?」
武尊は黒い笑顔を浮かべて、ナポレオンを見下ろす。
「…プッ…武尊…清い心って…」
三蔵は必死に笑いをこらえている。
「」
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