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「そんな、いきなり日本…ですか…?」
「ああ!」
「そんな…!僕達は韓国を出たこともないんですよ!?」
二人の青年が、ふくよかな体型の中年男性と、困りきった様子で話している。
二人の青年の名は、イ・スジュムとキム・ウォニ。
1年半前に『Neun(ノイン)』という名でS-Jum(スジュム)とWoni(ウォニ)として歌手デビューした、今韓国で人気の若手歌手ユニットだ。
背が高く、髪の毛を左に流している方がスジュム。
スジュムより少し背が低く、後ろ髪を立てているのがウォニ。
「大丈夫だ!日本は良いところだぞ!
二人のご家族も了承済みだ!」
中年男性(事務所の社長)は両手を広げ、笑顔で言う。
「…いつの間に…;;」
「…日本か…」
スジュムの握っていた拳に力が入る。
「さぁ、まず日本語の勉強からだな!
高校の授業で習ったものだけでは、実践には使えんからな」
「僕、日本語の成績良かったから頑張れるかも!」
張り切るウォニ。
「僕まぁまぁだった…;;」
少し自信が無さそうなスジュム。
とりあえず二人は、日本でデビューすることを受け入れているようだ。
「よし、まぁ、日本での正式なデビューは4ヶ月後だ。
その前に2〜3ヶ月したら挨拶や打ち合わせがあって日本に行くことも多くなる。
それまでには、日常会話+αくらいは喋れるように、平仮名くらいは書けて読めるようにしておくんだ!」
「「はい…!;;」」
二人は早速講師を紹介された。
毎日の歌唱、ダンスレッスンに加え、日本語のレッスンが加わる事に。
毎日の忙しいスケジュールを更に詰めた大変なスケジュールであった…
そして4ヶ月後。
日本での宿舎へ必要最低限の荷物を送り、自分達も日本へと向かう。
宿舎の大家さんに挨拶をすませて、荷物を整理した。
日本でも韓国と同じように、スジュムとウォニは同じ部屋に住むことに。
日本での事務所やレコード会社関係者に挨拶をした後日、日本でのマネージャーに東京都内を軽く案内してもらった。
慣れなかった日本でも、目まぐるしくスケジュールをこなして過ぎて行く日々。
しかし持ち前の機転の良さと明るさで、それにもすぐに慣れた二人。
…そして迎えた、デビュー当日…
記者会見、デビューミニライブが行われた。
「Neunのリーダー、S-Jumです!
頑張ってみなさんの、心に響く歌を届けたいです!」
「NeunのWoniです!
日本でも認めてもらえるように、とても頑張ります!」
懸命に覚えた日本語で自己紹介した二人。
はじめのうちはかなり、言葉になまりがあったが、今では発音もかなり上手くなった。(多少まだなまっているが)
それから記者達の質問に、日本語で丁寧に答えて行く。
そして、いよいよミニライブ。
観客は二人が思っていたより、はるかに大勢の人が。
スタッフに聞いた話だと、デビューミニライブの為、会場が小さく、会場に入りきらない客も沢山いるようだ。
「僕達のために、日本の人がこんなに集まってくれたんだな…」
隠し扉から、会場内の様子を伺うスジュム。
「ビックリだね…なんだか凄く緊張するよ…」
ウォニも、只でさえ緊張しているのに更に緊張して、大量の水を接種している。
「一時期、韓流ブームがあったからね。
その影響で、韓国歌手のファンになった人も多いからなぁ」
日本でのNeunのマネージャー、田中秀樹も会話に加わる。
「田中さん、歌詞まちがえちゃったら、どしよ…;;」
不安な表情のウォニ。
「大丈夫大丈夫。
リラックスして歌えば間違えないよ!
あんなに練習したんだしさ」
田中はにこやかにウォニを励ます。
「は……ダンスこうだったっけ…?」
スジュムもウォニの緊張がうつったようで、焦っているようだ。
「二人とも、大丈夫だから!
はい、深呼吸して〜…
あと、ウォニはトイレ行ってきてね!
水飲みすぎだから…(笑)」
二人は深呼吸する。
ウォニは言われたように、トイレに直行。
「田中さん、ありがとうございます。
なんだか少し落ちました〜^^」
「“落ち着いた”ね(笑)」
「あ〜…僕、日本語まだまだですね^^;」
しかし本当に落ち着いたようで、スジュムは笑顔を浮かべている。
「ありがとございます田中さん!
トイレ、人が多くなる前に行けました〜!」
「え、そっちのこと?(笑)」
ウォニと田中の会話で、控室の中の他のスタッフ達の表情も和らいだ。
「僕達の歌を日本語で…
歌で他の国の人と繋がる……
何だか凄い事ですよね…^^」
スジュムが興奮気味に言う。
「そうだね、しかもスジュムとウォニが作った歌だからね」
田中は頷く。
「なんだか嬉しいね!
違う国でも気持ちが通じる…」
胸に手を当てる仕草をするウォニ。
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