非・現実奇記
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「ん・・・」
ある男の目が覚めた。
「ここは…」
寝ぼけ眼で周りを見回すが、いかんせんよく見えない。
しかし、徐々に景色が見えてきた。
「ん‥?こ、ここはどこだ?」
見覚えの無い景色が一面と、いや、かすかに見覚えがある。
しかし、何かが違う。
「うーんと‥いや、あれ?うーん…」
男は悩んだ。見覚えがあるのに違う景色が広がっている。
男は考えていく内にパニックになりつつあった。
「あ‥あう、いや、違うな。いや‥うーん…」
しばらく考えたが、結論も出るはずも無く、男は歩き出す事にした。
「しかし、寒いな…」
先ほどまでパニックになっていたので気づいていなかったが、周りは突き刺すような寒い風が吹く氷の世界である。
いや、氷漬けの街と言った方がわかりやすい。
「なぜ、私はこんな姿なのだろうか‥上着が欲しい…」
男の格好は上下スウェットで、いかにも部屋着といったところか。
足はサンダルを履いている。
「ううう‥歩いても歩いても氷しか無い…どこなんだここは…」
男はひたすら歩いた。極寒の中、薄い格好で凍傷になりかけるぐらいひたすら歩いた。
「あ、あれは‥明かりだ!明かりがある!」
男は突然遠くに見えた明かりに興奮し、寒さを我慢しつつ明かりの元へ走っていった。
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