こないだ一緒に狩りに行かせていただいた方のお名前使わせていただいてます(´∀`)
というかリアルに会話が面白かったので……笑









 弓を、使おうと思うんです。
 そんなことを不意に言われて、リーはぱちんと瞬く。狩りが終わり、集会所に戻ってきたところだ。アイテムボックスへといらないものをしまっていたところに、ついと横に寄ってきたのは太刀を担いだマコトだ。ふと見れば、その後ろに朱色もいる。それでですね、とマコトは続けた。
「おすすめの弓を教えてください!」
 ぱちぱちと瞬いて、首をかしげた。彼女らとは、何度か狩りに行ったことがある。確かマコトは太刀使い。朱色は太刀も弓も使うと記憶していたのだが。そう思って朱色に視線をやると、彼女はぶんぶんと頭を横に振る。
「私は弓はそんなに詳しくないから、訊くならリーさんの方がいいと思って!」
 わたしも実はメイン武器は太刀なのだけど。などと思いながら、ひとまず質問に答えるべく口を開く。今まで使った中で、おすすめできる弓といえば。
「……ファーレンフリード、かな?」
 セレーネも捨てがたいが、やはりファーレンフリードの方が使い勝手が良いだろう。無属性の連射弓、会心率15%、溜め4開放、曲射は集中。対応しているビンも多い。こいつを担げば、たいていの敵に対応できるはずだ。もちろん、弱点を的確に狙い撃つ技術は必要になってくるが。
「ファーレンフリード、えっと何から強化?」
「確かベリオロスと、亜種だよ」
 そんなことを言いながら、彼女たちは武器屋へと向かう。なんとなく気になったリーは、その後を追った。
 店先で店主の爺さんに色々と確認している彼女らを微笑ましく眺める。必要な素材は何か。何から強化できるのか。会話を聞き流しながら横で暇そうにしているモミジィの肉球をふにふにと弄んでいると、横合いから再びお声がかかった。
「リーさん、あの、防具は何がオススメですか?」
「……作ってないの?」
 驚いて問い返すと、マコトはしょんぼりと身体を縮めた。語るところによると、まだガンナー装備はひとつも持っていないらしい。弓を作った所で、それではちょっと狩りに出るのは厳しいだろう。……世の中には、インナーだけで狩りに出るつわものも、いることはいるけれども。言うまでもなくそれは特殊な例だ。しかしまあ、一つも作っていないというのならば。
「カボチャ一式とか、作っておいてもいいんじゃないかな」
 通称カボチャ。正式名称は、マギュルSシリーズ。弓使いには重要なスキル「集中」をはじめとして有効なスキルが発動し、空きスロットも多い。素材集めも簡単だ。
「防御力が心配なら、ネブラUもおすすめだけど」
 農場で素材が集まるマギュル一式に比べると狩りに出る必要はあるが、「集中」に加えて「ランナー」を発動させることが可能だ。たいていの弓使いはこれか、これを元に構成した装備を愛用している者が多い。少なくとも、リーが出会ったことのある人たちはそうだった。
 そんなようなことを述べると、マコトは早速手持ちの素材を確認したようだった。少し足りない、呟いて顔を上げ、おそるおそる、というようにこちらを窺う。
「……あの、ギギネブラ亜種、お願いできますか」
 隣にいる朱色には問いもしない。どうやら長い付き合いのようなので、そのあたりは了解済みなのだろう。ふにふにしていたモミジィの肉球を手放し、リーは笑って立ち上がる。
「いいよ、行こうか」
 ぱっと表情を明るくしたマコトが、装備整えてきます! と走り去る。かわいらしいことだ、と思わず頬が緩む。
 自分が見た目に反して結構歳を食っているせいか、どうしても若い子を見るとほほえましく感じてしまう。それで侮られていると感じる人もいるらしいので、リーはこうして屈託なく接してくれるマコトと朱色が、結構好きだった。
(さて、しかし私で力になれるかどうか)
 彼女たちもかなり長い経験のあるハンターだ。だがまあ、手数はいた方が楽だろう。そんなふうに思いながら、踵を返していったん自宅へと戻る。準備を整えて集会所に戻ると、すでにマコトと朱色は準備ができているようだった。ボードに貼り出されたカードを取り、カウンターへと向かって手続きを済ませる。そうして彼女らに合流すると、なにやら朱色が笑っている。
「そんなにおかしい……?」
 首を傾げているのはマコトだ。どうしたのかと訊いてみると、朱色が笑いながら言う。
「マギュル装備を作るのに必要な素材、なんて言います?」
「……ペピポパンプキン?」
 リーが首をかしげて答えると、マコトも同じように答えた。いや、答えようと、した。
「ぷぺぽぱんぷきん!」
「ぶっ」
 思わずふき出す。言えていない。舌が回っていない。朱色が相変わらず笑いながら指摘する。
「ほらー言えてないよ?」
「おかしいなー……ぷ、ぷぺ、……ぽ?」
「ぷ、じゃないんだよ、ぺ、ぴ、ぽ、パンプキン」
「ぺ、ぴ、ぽ、パンプキン。ペピポパンプキン!」
 言えたー! と喜んでいるのが、また微笑ましい。笑いをこらえていると、それに気付いたのかマコトが慌てたように言った。
「す、すみません待たせて……行きましょう!」
「はいはい」
 しかし緩んだ頬はなかなか元に戻らない。結局、半笑いのままでギギネブラ亜種と相対することになってしまった。
 狩り自体はそう苦戦もしなかった。が、帰る途中で同じ話題になり、再びマコトが「ぷぺぽぱんぷきん……」と呟いたことにより、リーはついに腹を抱えて笑ったのだった。







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