ビリーはんの髪が短くなった理由はなんだろう? と考えてて、
こんな事情があったら私が燃える。と妄想したもの。起承転結とかない。
ただのワンシーンを書きとめたものです。









 ひゅ、と風を斬る音がする。反射的に、ビリーは地面を蹴って後ろへと跳ぶ。だが完全には避けきれなかったらしい。頬が浅く裂けて血が吹き出す。それでも敵は止まらなかった。更に踏み込み、返す刀で斬りつけてくる。反応できたのは僥倖と言うべきだろう。無理な体勢ではあったが、頭を下げてやり過ごし、そのまま前転して敵の背後へと抜けた。ざり、と嫌な音がしたが、構ってはいられない。素早く身体を起こして敵に向き直ると、そいつはビリーを見下ろしていた。その瞳には、称賛の光がある。よく避けた、と思っているのは明らかだった。
(冗談じゃない……)
 内心で呟く。ビリーはモンスターハンターだ。人間と斬りあう訓練など受けてはいないし、そんなことをするつもりも毛頭ない。だが、今相対しているこの敵は、人を斬ることに慣れている。明らかにそのための訓練を積んだものだとわかる。解らないのは、何故自分が狙われるのか、ということだ。
 ふと、地面に落ちたものが視界に入った。思わず、手で己の髪を探る。長く伸ばして編んでいた髪が途中で斬り落とされ、解けかかっていた。地面に落ちた髪を見て、ぞっとする。この髪を斬り落とした刀は、明らかにビリーの首を狙っていたのだ。回避が少しでも遅れたら、そこに転がっているのは己の首だったかもしれない。
 敵は、かるく手にした刀を振った。確かめるように持ち直し、次の瞬間には無造作に間合いを詰めてきた。ぎょっとして、ビリーは咄嗟に右腕の盾で上段からの斬撃を受け止める。刀にじわじわと体重を乗せながら、敵は静かに笑ったようだった。
「なかなか、やる」
 瞳が笑っている。間近で見るとその瞳は深い茶色で、ビリーは己の属する猟団の団長を連想した。東方出身の彼は、確かこんな目の色をしていたはずだ。
「東方の剣士か?」
「ほう?」
 試しに言ってみると、その瞳が楽しげに光った。なんとなしに危険を感じて、力任せに刀を弾き返し、距離を取る。予想に反して、相手は追ってこなかった。刀をぶら下げたまま、左手で顎を摺る。
「よく知ってるな? こっちじゃそんなに知られてないはずだが……」
 その疑問に答えてやる義理はない。ビリーが黙っていると、その男はにやりと口元を歪めた。ひどく危険なものに感じて、すっと肝が冷える。
「なんにせよ、広まることはないから、いいか」
 自分が勝つことを疑いもしていない。そういう口調だった。その言葉に抗うため、ビリーはそっと武器を握りなおした。






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