助っ人要請が出たのでガンダレスと共に宇宙を飛ぶ最中、初めてバルガの通信アドレスを入力した。呼び出すとすぐにバルガは出た。 「どうしたのだ?我が義弟達よ」 「なあ、バルガ」 「ナマエ姉、帰ってから変なんだ!」 「部屋から出てこないんだ」 ガンダレスは通信機に乗り出してモニターに言う。 「何、我が愛しの妻が!?」 「バルガ、何か知らないか?」 「きっとサンドイッチで何かあったんだよ!」 「ふむ……、」 バルガが腕を組む。 「アイツのせいだ」 「アイツ?」 「サンドリアスイレブンのキャプテン、カゼルマ・ウォーグだ」 「カ、カゼ?」 「カゼルマだ。奴は我が麗しのナマエを一方的に!言の葉の暴力で!傷付けたのだ!」 「そうなのか!酷いなリュゲル兄!えと、何だっけ」 「カゼマル、だろう?ガンダレス」 「そうそう!カゼマル!」 「これから私は試合だが、義弟達よ、艶かしい我が妻に伝えてくれ。私の激しくもしなやかで美しい、鳳凰のごときプレーを見ていてくれとな!」 「なあ、さっきから気になってたんだが…弟ってなんだ?」 「そうだよ!俺の家族はナマエ姉とリュゲル兄だけだよ!」 「お前達はわからないのか」 バルガが照れたように笑う。 「私はお前達の姉さんと結婚してお前達のお義兄さんとなるのだ」 「ええ!?」 「バルガ、俺の兄ちゃんになるの!?」 「ああ。将来的にな」 「イヤだよリュゲル兄!俺バルガが兄ちゃんなんてやだ!」 「落ち着けガンダレス、俺も嫌だ」 「そう照れなくても良い。お前達姉弟は本当に照れ屋だな」 バルガの笑いが聞こえ、俺は通信を遮断した。 「取り合えず、犯人がわかったな」 「えーっと、誰だっけ」 「カゼマルだ」 「そうそう!カゼマル」 「姉さんを傷付けるなんて許さない。助っ人の仕事が全部終わったらサンドイッチに行くぞガンダレス!」 「そうだね!やっつけてやろうよリュゲル兄!」
布団の中、タブレットを開きニュースを見る。 グランドセレスタギャラクシーの記事がトップに出ており、見出しにはファラムが勝ち上がった事が書かれていた。記事を開き他の試合結果を見ていた時、サンドリアスという文字に目が止まった。 「サンドリアス…敗退…!?」 サンドリアスの終わりに思い浮かぶのは大嫌いのはずだったアイツの顔で、それでも、今でも胸が締め付けられるのは、 「カゼルマ、」 画面に着信の表示が出た。開くと運営委員会からであり、緊急招集との事だった。 「これは、行かなきゃマズイやつ、かな」 久しぶりに起き上がり、洗面台で顔を見て絶句した。 「酷い顔…」 取り合えず顔を洗い、氷嚢で目を冷やす。招集時間が迫る中、なかなか腫れが引かなくて、もう遅れて行くことを決めた。 腫れが引いた頃、とれない赤みをメイクで隠し、招集場所に向かった。
「…我々に……、」 「それはなりません!」 招集場所、オズロックさんの声と聞いたことのない女の子の声がした。 「これはこのファラム・オービアスに迫るブラックホールを払い、銀河を救う事の出来る唯一の力!あなた方に渡す訳にはいきません!」 銀河を、救う。 ブラックホールを払えれば、他の星々と生存をかけて戦う必要が無くなる。彼の星を、救えるのだ。 その時、タブレットが着信音と共に震えた。あまりの突然に心臓が高鳴る。 「誰だ」 オズロックさんの声が響く。 隠れている訳にもいかないので、私は彼らのもとへ出ていく。 「あの、ナマエ・バランです。遅れてすいません。どうしても出れる状態でなくて、」 「聞いていたのか?」 「え、ええ、」 「あの、この方は?」 女の子がオズロックさんに訊ねる。 「彼女はグランドセレスタギャラクシーの試合場所の設営を担当している」 「そうなのですか。オズロックさん、彼女、ナマエさんと申しましたか?」 「は、はい」 「ナマエさんにも手伝って頂きませんか?話を聞いてしまったんですから、せっかくですし…」 オズロックさんはしばらく考えるように目を瞑る。 「そうだな。…ただし、」 「はい」 「この事は他言無用だ。故に私の監視下で行ってもらう」 「…わかりました」
「もしもし。リュゲル、ガンダレス?」 先程の着信のアドレスにかけ直すとかわいい弟達が元気な顔を見せる。 「姉さん!」 「ナマエ姉!」 「もう大丈夫なのか?姉さん」 「ナマエ姉大丈夫?」 「うん。心配かけてごめんなさい」 「あのさ!ナマエ姉!俺達、サンドイッチに、」 「おいおいガンダレス、それは姉さんには内緒だろう?」 「あ、そうだった!ナマエ姉、何にもないよ!」 本人の前で秘密も何もないだろうと思ったが、弟達のかわいい秘密に笑う。 「そうそう。私、またしばらく働くから、家いないわよ」 「ええ!?姉さんまたいないのか!?」 「寂しいよナマエ姉!」 「ふふ、なるべく早く帰って来れるよう頑張るわ」
私は、彼の星を救う。
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