1. あれから、幾度かの夏が来た。 持て余していた長い夏休みを有効に使おうと、海道の所有する別荘に行くことになった。 初めはシーカーのメンバー全員でだったが、その日都合が付いたのがバン、アミ、カズ、ジン、郷田、仙道の6人だけ。 今はその6人で別荘へと向かう最中だった。 「ジン、これから行く別荘ってどんなとこなんだ?」 「僕が海道家に引き取られて間もない頃におじいさまが一度だけ連れて行ってくれたところなんだ」 「へぇ、楽しみだわ」 「だけど、山奥なんだろ?」 カズは気怠そうに窓の外を見る。ミソラタウンとは違って外は田や畑が広がっていた。 人ひとり通らない砂利道をジン達を乗せた車は静かに通り抜けていく。 「それにしても相当山奥のようだねぇ、大丈夫なのかホントに」 「別荘の方はちゃんと使えるみたいだし、ちゃんと泊まれるようじいやが先に行って色々と準備してくれてる」 「そうだ、ジン忘れてないだろうな」 「夕飯の材料だろ、それも一緒に準備しておいたさ」 「やっぱ夏は外でカレーとバーベキューだよな」 「だから郷田の奴あんなに気合い入ってんのか」 車の中で騒ぐ郷田をカズや仙道は呆れがちに見ていたが、ジンは急に黙り込み、外を見つめた。 まだバン達には話してないが、これから行く場所は神隠しが多くあった所だ。 (じいやは浮かない顔をしていたけど、何故だか行かなきゃいけない気がして) 「呼んでる…」 ジンは皆に聞こえるかどうか分からない声で呟いた。隣にいたバンは怪訝そうに見る。 「ジン?」 「え、あ、すまないバン君。なんだい?」 「急に黙り込んだからどうしたのかと思って」 「大丈夫、少し考え事をしてただけさ」 |