京→天←雨 病院ではよくある話。 オチが微妙。 「あの空き部屋出るんだってさ」 「出るってなにが?」 「ゆ・う・れ・い」 病院ではよく噂される。冬花は否定してたが、太陽も実際に確かめたわけではないので真偽は分からない。だが、天馬は真に受けたらしい。 「そ、そうなんだ…へぇ」 「天馬、もしかして怖い?」 太陽は意地悪な笑みを浮かべながら顔を引きつった天馬の顔へと近付ける。 (あ、キスできそう) 後少しで唇が触れ合うとこで天馬は椅子から立ち上がった。 太陽は天馬に聞こえないよう舌打ちをする。 「ち、ちがうよ!怖くなんかっ、むしろ木枯らし荘のがボロいし余程怖いよ!」 秋姉には悪いけど、と思いつつも、天馬は素直に述べた。 「ふぅん、じゃあさ今から行ってみる?」 「へ、」 太陽にガシッと腕を掴まれていて逃げられない。病人とは思えないほど凄い力だ。 「だ、駄目だよ太陽、抜け出したら冬花さんに怒られる…」 「平気だよ、すぐそこだし。2人で行けば怖くないって」 「だから怖くなんか…」 天馬は太陽のペースに呑まれそうになっていると背後から急に肩を掴まれ引き寄せられた。 「あまり松風をからかうな」 「つ、剣城?!」 驚いて背後を見ると不機嫌そうな表情で剣城が立っていた。 「えっと、優一さんのお見舞い終わったの?」 剣城は頷いた。太陽はそれを聞いて残念そうに呟いた。 「あーあ、タイムリミットかぁ」 剣城は兄の見舞いを終えるとこうして天馬のとこへと迎えに来る。 剣城が来ると天馬も一緒に帰るのでタイムリミットだ。 帰る天馬を名残惜しそうに見てると、横にいた剣城が太陽へと振り返った。 「そうだ雨宮。さっき兄さんに聞いたんだが、例の空き部屋、野良猫が紛れ込んで大騒ぎだったらしいな」 幽霊ではなかったらしい。 |