2.


バンの通う高校でもLBXは流行っていた。確かに子供だけではなく大人も夢中になるくらいなのだから流行っていてもおかしくはない。
そのためクラスメートはLBXとかに詳しい人間ばかりだ。


「三年前のアルテミス、凄かったよな」
「海道と山野は出ねぇの?」
「え?」
「俺、あの時の二人のバトルめちゃくちゃワクワクしたんだけど」
「だって2人とも優勝者と準優勝者なんだろ」
「えっと…」

バンは一瞬戸惑う。
特にまた出たいとかは考えてなかった。あの時アルテミスに出場したのは世界の危機とか、父のこととか色々あったからだ。
確かにジンとのバトルとは楽しかったし、ワクワクした。
しかし、その背景に傷付いた者や死んだ人間もいた。


「……何も知らないのによく言える」


今まで黙っていたジンが不機嫌そうに呟いた。

「あ、ジン」

バンが呼び止める前にジンは教室から出て行ってしまった。突然のことになにがなんだか分からずに困惑するクラスメートへバンは向き直った。

「ごめん」







「ジン待てよ!」

バンの声にジンはようやく立ち止まった。

「ジン、気悪くしたよな…?」

ジンだってあの時は辛かった筈だ。イノベーターとして自分と対立もした。ずっと信じていた祖父もアンドロイドだったのだ。そして、その祖父を失った。

「ごめん、でも皆は何も知らないんだし、悪気があるわけじゃ…」
「なぜ君が謝る?君が一番辛い思いをしたのに」
「え?」

バンはアルテミスでアキレスを破壊された。その後も戦いは続き、目の前で宇崎社長やレックスを失った。
ジンはそんなバンの前で三年前のことを何も知らず楽しそうに語るクラスメートが許せなかったようだ。ジンの自分に対する気遣いを察したバンははにかむように笑った。

「そっか、ありがとうジン」
「き、君が平気なら僕は別に構わない…」
「そうなの?」

「それにさっきの対応、僕も大人げなかった。彼らも悪気があって言った訳じゃないのにね」





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