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▼ 入院日記2




*関東決勝前



「幸村君、体調はいかがですか」



暖かな日差しが差し込む平日の正午過ぎ。思いも寄らない来客に幸村君は目を見開きました。



「柳生じゃないか」


「ふふ、驚きました?」


「驚いたよ!柳生が一人で来ることなんて滅多にないからね」




新しい花を花瓶に変えてあげれば幸村君はパッと明るい表情になり、年相応の可愛らしい笑顔を見せてれます。テニスをしている時の、厳しく、凛々しい幸村君も素敵だと思いますが、普段の穏やかな幸村君の、あどけない笑顔を見るのも好きなのです。





「今日は、幸村君にお話しがあってきました。」




水を替えた私は、幸村君の近くにある椅子に腰掛けて話を始めました。


幸村君は優しげな表情で目を見て話を聞く体制に入ってくれています。





「明後日は、関東決勝ですね」



「.....ああ」



「でも、その前に。あなたの手術日でもあります」





幸村君は、その話題には触れられたくなかったのか。少し顔を歪めると話を逸らそうとしました。




「そういえば昨日、真田がさ」



「幸村君。」



「....」



「話を聞いてください」






はあ、と彼は一つため息をはくと、小さな声で分かった、と頷きました。




「そんな嫌な顔しないでください。言いたい事は一つだけです。」


「...?」




「幸村君..幸村部長は、私にとっても、大切な存在なんです。

...どうしようもなくなって、あなたが転びそうになってしまった時でも、私は必ず貴方を支える事を誓います。」





それだけ告げると、幸村君は少し驚いた顔をしました。





「あは、本当にすぐ終わった」



「げ..げふん。私が告げたかったのはそれだけですよ」




ふふふ、と微笑むといつもの調子で幸村君は言います。





「柳生の事だから真田みたいに云々手術について語り始めるのかと思ったら。..なるほどね。有り難う柳生」



「いえいえ。ですがそう思っているのは私だけではありません。真田君も柳君も切原君も丸井君も桑原くんも、そして仁王君も。」



「..」



「貴方の事を、大切に想っています」



「柳生...」




自らの名を呼んだ彼の声は震えている気がして。私は彼の顔をまじまじと見る事ができずにくるりと背を向けてしまいました。



「それだけです。あなたは一人で抱え込むところがありますからね」



「うん..」



「大丈夫ですよ、幸村君。今だけ。あなたは、あなたのことだけを考えなさい。」




たった5分という短い時間でしたが、私はとても満足でした。今日はそれだけ、たったそれだけを伝えたかったのですから。



私は最後に幸村君の顔を見ることなく病室を出て行きました。







そして、幸村君は、優しい香りに包まれた残された病室で、一人呟くのです。






「有り難う。....仁王。」




入院日記2



( お、仁王君おかえりなさい。上手くいきましたか? )
( ...多分ばれとったぜよ )




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仁王君はなんだかんだ幸村のこと心配してるんだけど普段そんなキャラじゃないし直接言うのは恥ずかしいから柳生の姿借りて言いに行く〜、みたいな小説を書きたかった


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