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立海大付属中学に入学してはや1ヶ月。学年の中でひときわ目立つ存在の人物がいた。その男の名は仁王雅治。銀色に染めた髪に整った容姿、少し高い身長で中学一年生とは思えないほどの色気を放っていて、学年の女子はすでに彼の虜となっている者も多かった。

仁王は自らの立ち位置をしっかり把握し、自らの評価も心得ている。調子に乗った仁王はこの1ヶ月間、学年で可愛いと評判されている色んな女子達と男女の関係的な意味で仲良くしていた。その事でも仁王は学年の話題に富んだ人物であったが、もちろん、学年、といってもそれは一部の話。立海大附属はマンモス校であるため、違う階の人間についてはまだ詳しくは知らない。




彼に出逢ったのはそんなある日のこと。廊下を歩いていた時、1人の少女を見つけ、思わず足を止めた。目が合うと、時間が止まり周りが透明になったような気がした。窓から注ぎ込まれる春の暖かな風に、藍色の柔らかな髪が揺らされて、その中で、少女はニコリと笑った。ドキリとした。純粋なトキメキを感じつつも、いつもの女達と同じように、自分に脈があるんじゃないかと仁王は過信していた。



不敵な笑みを浮かべ少女に近づく。




「お前さん、違う階の生徒かの?」
「..うん。友達がこの階にいてね」
「そうなんか。こんな可愛い子がいたなんてのお」




それは単純なゲームのようなもので。




「...ふふ、そうかな」




いつものように俺は、




「ああ。可愛いなり」




優しく髪をなぜ、




「...のお、俺と遊んでみんか」




甘い声で囁けば




「悪いようにはせんぜよ」





落ちない女はいないと思っていた。そう、今回も同じようにいくと思っていたのだ。しかし、それはあくまで仁王の過信にしか過ぎなかった。

パチンと平手打ちの音が廊下全体がホールになったかのように響き渡る。




「あいにく、俺は男なんだよね。」



そう一言告げると、彼は
苛立ちを隠しきれない様子で笑った。




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