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仁王雅治の憂鬱



「もっと可愛くなりたいなあ」

幸村が静かに呟いた台詞を
俺は聞き逃さなかった



「それ以上可愛いくなったら、
世の男子に襲われるぜよ」


「馬鹿。こっちは真面目に話しているんだよ?」



こっちだって真面目に話している。つもりだが自分の性格上どうしてもおちゃらけて話してしまう。
幸村は少し天然なところがある。しっかりしていて、人の気持ちに鋭そうな顔して全くひとの気持ちに鈍感なのだ。俺の知る幸村精市という男は。




幸村の、

その唇が、

髪が、

お前さんの全てが。

俺を誘惑してるように
見えるなんて、



こいつは知らない







でも





「真田のためか」


「…うるさいよ仁王」



その権利は俺にはない

触れることだって
許されはしない


なのに止めることなんて
出来なくて

その想いは増していくばかりで



「…仁王?」


柔らかな唇にキスを落とす。
たった一瞬の出来事。

でも、たった一瞬でも、
彼の目に自分しか写らないことで自己満足の優越感が生まれた。


目を開けたときに

彼はどんな反応をするのだろうか




仁王雅治の憂鬱




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