*ゆっきーとおばけ
部活も終わり、濡れた肌に冷たい夜の風が突き刺されば、たちまち鳥肌が止まらずにせめてマフラーを持って来るべきだったなと後悔した。
今日は10月31日。ハロウィンであり、例の三馬鹿…もとい仁王と丸井、そして赤也が騒ぎだす一日だろう。
そんなことくらい朝から目に見えていた。目に見えていたくせに、お菓子を買い忘れてしまった
そのおかげで、学校についてからの運勢は最悪。
お菓子がないからと悪戯という名のセクハラを受け、
やっと三人から逃げ切ったと思ったら先生から手伝いを頼まれ、
途中なんかよくわからない変な奴からお菓子をせがまれ…
部活は人集まり悪いし、お菓子のゴミは落ちてるし、花は枯れるし
なにより、一番気にかかったのは
先程の変な奴が俺についてきてしまったこと。
ちなみに人間ではない
白いぬのきれをかぶり、まるで
子供が絵に書くようなおばけみたいなかんじの物体で
…上手くはいえないけど
とにかく全っ然怖くない
「あの…」
「……」
「ねえ」
「…聞こえてるさ」
正体不明の物体。
白くて浮いている
未確認飛行物体?
「誰?」と聞いたら「内緒」とかえってくるし、なんでと聞いても「内緒」とかえってくるし。
いい加減拉致があかない
「遊んでるならほかの奴にしてくれないか?あいにく、おばけなんかで怖がるたちじゃなくてね」
伸びた影は一つだけで
おそらく周りの人間には
こいつが見えていないのだろう
ニヤニヤと不適な笑みを浮かべこちらを見てくる自称おばけに、なんだか不安な気持ちを見透かされているようで、ちょっと怖くなった
「っ、なんだよ」
「いや…君は綺麗な顔をしている」
「……」
「あれ?コンプレックスだったかい?」
「…はあ。俺は男だぞ」
「ふっ、知ってるさ
おばけは冗談が好きなんだ」
全くもって意味がわからない。
俺の周りをふらふらととんだかとおもえば、目の前に突然出て来て消えたり。
それからくだらない話がぽんぽんと出て来て、帰るまでの一時間不思議と時間が早くすぎてく気がした
「あと少しで家だ」
「早いもんだな
…日がくれるのも」
「冬だから」
「ああ、俺もじゃあ
消えるとしようか」
沈みゆく夕日を一人と一匹が見送る。
一瞬悲しげにみえたおばけの表情はぱっと明るくなり、またなと言って消えていった。
「…本当なんだったんだ」
一瞬のような長かったような
不思議な時間を過ごしたと思う
でも、たまには悪くない
こうやっておばけと話せるのも
年に一度のハロウィンも
(( 失われた時間 ))
(ちょっと待て、俺が学校でたときには…夕日はもう…)