04

うちのクラスは文化祭でカフェをやることになった。ただやるだけじゃおもしろくないので、全員コスプレだ。男子も女装をしたり人気のキャラクターの格好をしたりする。文化祭は2日間あるので、1日ずつ自由時間を作れるように分担した。私達の女子グループは1日目を担当して、2日目に文化祭を満喫することになった。黒尾と夜久も1日目らしく、誰がどのコスプレをするかの話し合いになった。

「何のやつやるー?ちなみにみょうじはゾンビでいいよな」
「え、普通にいやなんだけど」
「じゃあ決まりなー。他はどうする?」
「いや絶対いやだ。黒尾がやってよ」
「何で俺がやるんだよ」
「言い出しっぺの法則でしょ」
「おいみょうじ嫌がってんだろ」
「そうだそうだー夜久の言う通りだー」

私だって年頃の女の子だ。折角だから可愛い格好をしたい。

「カフェだしメイドでいいじゃん」
「お前おもしろくねえな、こういうのはインパクト勝負だろ。みょうじのゾンビならすっぴんのままで充分怖いんじゃねえの」
「すっぴんとか嫌だしさりげなく失礼なんだけど」

私がメイドを提案したら却下したくせに、他の女の子が「メイドやりたーい」と言うと黒尾が手のひらを返したように、
「じゃあみょうじ以外はメイドでいいんじゃね」と言った。何なんだ一体。私が輪を外れて一人でいじけていると、夜久が側に寄ってきた。

「あいつああ言ってるけど気にすんなよ」
「気にはしてないけど私の扱いひどくない?」

黒尾の方を見やると、男子同士で何をやるかわいわい決めていた。それに女子が意見したり同調したり。いじけて外れたのは私だけど、楽しそうなのが何だか面白くない。

「それだけみょうじには気を許してんだって。俺から後で言っとくから拗ねんなよ、な?」

黒尾のフォローをしてくれる夜久は優しい。黒尾とはまた違う意味でキラッキラしていて、女子に人気があるのも頷ける。

「おいコラー、そこイチャイチャすんなー」

目敏く見つけてきて、真顔で茶化してくる黒尾が自棄に憎たらしい。さっきまで楽しそうにしてたくせに。

「してねえよ、誰のせいだと思ってんだ」

私の側を離れて輪に戻る小さくも頼もしい夜久の背中を見ていたら、いじけていた気持ちも少し和らいだ。折角の文化祭だから全員が楽しめなくなるのを危惧してフォローしてくれたのだろう。
あれくらいのことでどうしてここまでいじけたのか自分でもわからないけど、不本意ながら私も輪に戻ろうと思った。



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