一学年の上の先輩方が引退し北はバレー部の主将となり、当然恋愛どころではないまま三年生になった。相変わらず北にじゃれついてはさらっと躱されるナマエだったが最後の高校生活とあってクラス変えには並々ならぬ思いがある。LJKやで……頼むで神様……と祈る気持ちでクラス発表の紙を見る。北くん七組なんや。今年も自分のより先に北の名前を探すナマエである。私も七組がええなあ、と七組を見るとなんと“ミョウジナマエ”と記載されている。……ん? 思わずフリーズしていると、友人たちが駆け寄ってくる。

「おはよう。何組やった?」
「……なあ、私ほんまに七組なん?」
「はあ?」

 友人たちは訝しみ、七組のところを見てみるとやはりミョウジナマエと書いてある。

「……七組やで」
「ヨッッッッッシャ来たあああああああ」
「え、なに!? 怖」
「やっと! 北くんとおんなしクラスやあああああ」
「うるさ!」

 両手でガッツポーズをし天を仰ぐナマエに、クラス変えでこんだけテンション上がる人おる!? と友人たちどころかその場にいる全員が引いている。

「けどナマエだけクラス離れてもうたなあ」
「…………エ?」
「うちらは一緒やねんけどな」
「いややー! 私も一緒がいい!」
「さっきヨッシャとか言うてたん誰!?」
「先生なんで私だけ仲間はずれにするん!? 私友達おらんて知ってるやろ!?」
「北くんがおるやん」
「北くんともみんなとも一緒がいい!」
「大丈夫やって、七組遊び行くしナマエも遊びに来たらええし」
「私は遊びで女子高生やってるんちゃう!」
「遊びで高校生やってるやつなんかひとりもおらんわ」

 あんまりや……。
 先ほどとは打って変わりナマエはがっくりと肩を落とした。教室までの道すがら、友人たちはなんとかナマエを励ます。が、如何せん別のクラスなので「あ、じゃあうちらここやから」と先に教室へ入っていってしまった。いやや! 置いていかんといて! ナマエも友人たちに着いてちゃっかり教室へ入るが「あんたは七組やろ!」とつまみ出されてしまった。なんでや……なんでそんなことするん……行き場のない哀愁を漂わせ、とぼとぼと七組に入ると真っ先に北の姿が視界に入る。そのまままっすぐ北の席へと向かった。

「北くんおはよう……」
「おはよう。何組や」
「ひどい! 私も七組やのに!」
「すまん。今年も乗り込んできたんかと」
「北くん聞いてやー。私だけ友達とクラス離れてもうたー」
「残念やったな」
「仲良しグループのひとりだけ別のクラスて、こんな血も涙もないクラス変えある? 鬼やで鬼」
「クラス違うくらいで何をそんなに落ち込んでんねん」
「高校生活最後やで!? ただでさえ私友達おらんのに!」
「ミョウジのことやからどうせ他のクラスだろうが我が物顔で入り浸るやろ。去年まで俺にやっとったし」
「そうなんやけども!」

 そう考えると大したことがないような気がしてくる。そりゃ同じクラスがええけど! このクラスで今さら友達できる気せえへんけど! 北くんと同じクラスにしてもらうことに運を全振りしてもうたんやからこれくらいは我慢せんとな。

「励ましてくれてありがとう、北くん優しいな」
「事実を言うただけやし別に励ましてへんよ」
「謙遜しとるん? 照れ屋やなあ」
「ミョウジには俺が照れとるように見えるん?」
「ごめんて、なんでいっつも目で威嚇してくるん」
「してへんわ。ほれ、はよ席着かんと」
「席替えしたら隣の席なろなー」
「約束はできんな」
「なんでそこ真面目に返すん」

 そういうとこ好きー! とはさすがのナマエも言えない。北に手を振り自分の席に着くと、ナマエは心が満たされるのを実感した。北くんとおんなしクラスなんや。うれしいなあ。友達とは離れてもうたけど、遊びおいでって言ってくれたし休み時間さっそく行こ。ほんで北くんとこんな話したんやでーって教えたろ。そんなナマエが北から「こいつどこのクラスおっても自分のクラスに居着かんやつやな」と思われるのはまだ先の話である。
back
- ナノ -