結局ネカフェで夜を明かしてしまった。
朝帰りなんて久しぶりにする。樹と出会う前はしょっちゅうしてたのに。しかも昔は罪悪感なんて微塵もなかった。それなのに今は、清々しいくらいの朝に家を目指すことがこんなにも情けない。
樹と出会って私は変わった。彼と出会った頃の私は、毎日遊びの限りを尽くすような破滅的な女子大生だった。そんなとき、樹と出会ってしまった。恋をしてしまった。真面目に生きる彼に似合う女になりたくて、日付が変わる前に家に帰るようになった。
樹はそんな私が鬱陶しかったのかもしれない。私が無理をしているように見えたのかもしれない。そんな私が痛々しく見えたのかもしれない。一体私たちはどこからすれ違ってしまったんだろう。最初から?出会ったことから既に間違いだった?
考えれば考えるほどわからなくなる。思い返せば思い返すほど心当たりがありすぎて、いっそ出会ってしまったことすら間違いだったんじゃないかと疑ってしまう。幸せだったときも確かにあったのに。愛されていると実感していたときも確かにあったのに。それすら間違いだったとは思いたくないけど、なにが正しかったのかさえわからなくなっているのが今の現状で、答えに他ならない。
もういっそ手放してしまった方が楽なのかもしれない。限界はとっくに越えてたのかもしれない。待ち続けることに疲れてしまった。もし次に顔を合わせたとき、別れ話を切り出されたら甘んじて受け入れよう。家を追い出されたらまたネカフェにお世話になればいい。爆睡を決められるくらいには寝心地も悪くなかったし、人生はどうにでもなる。樹と出会う前の私に戻るだけ。また適当に生きればいい。
そう思うことにした。
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