大地の陽番外編 | ナノ








思いもよらぬ人から珍しく、届いた文。

開いてみれば淡色の紙に達筆とは言えぬまでも、几帳面な文字の羅列が、率直で飾り気ない言葉を綴っていた。



これまで貰った、どの恋文よりも愛しくて。
重衡の顔が綻ぶ。
















「重衡さん!!」




風が、こちらに向かい走るゆきの髪を巻き上げる。


暫く会わぬ間にまた少し伸びた。

髪は、陽光を受け煌めく‥‥‥訪れ始めた秋の色。



「ゆきさん、慌てずとも良‥‥‥‥‥‥?」



良いですよ


そう続ける筈の唇は半開きのまま固まって出口を失った。


どうも彼女を前にすると、驚く事が多いらしい。



「ああ、私がそちらに参りますから」



重衡の足が砂を蹴り、一気に残りを詰める。

ゆきの走距離の倍以上を走った処で、互いに足を止めた。



「はぁ‥っ、はぁっ‥‥‥お、お待たせ‥‥しま‥‥」

「私なら大丈夫ですよ、ゆきさん。ゆっくり息を吸って下さい」



荒い息で言葉もおぼつかない。

そんな状態のゆきが、呼吸を整えるまで待った。



「‥‥‥落ち着かれましたか?」

「はい。あのっ、遅くなってすみません」

「いえ、私も来たばかりですから」

「本当?良かったぁ」



‥‥‥本当は随分前から待っていた、なんて秘めておく。



「ところでゆきさん、その荷物は?」



重衡が不思議そうに瞳を揺らす。


元気よく、とはお世辞にも言えない足取りだったゆき。

その原因がゆきの背中に鎮座‥‥‥否、背負われているのだから。



「あ、これですか?まだ秘密です」





背に括り付けた紐を解きながら、小さく笑った。



包装はそのままだから中身は見えないし、此処で開ける気はないらしい。



「わっ!‥‥‥重衡さん?」

「私がお持ちします」

「‥‥‥あ、ありがとう」
「いいえ。貴女の御手を塞ぐのは、私でありたいのですから」

「っもう!重衡さんってば上手いんだから」



片手で抱えたそれはずっしりと重量を主張して、何だかごろごろとしていた。

楽しそうに笑うゆきに自分も笑みを重ね、重衡は思う。





こんな風にいつも、いつも傍に居る夢が、



叶えば‥‥‥




 

  
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