大地の陽番外編 | ナノ
思えば、昨日無理をしてしまったからかもしれないし
ただの偶然かもしれない
でもね、泰明さん。
この日に、巡り合えたなんて
―――運命の絆で結ばれているんだと、私は思ったの。
9月14日
今までで一番、しあわせな日
祝福の陽
紅葉色に染まる迄にはまだ暫く時を有する嵐山。
それでも良く晴れ、山を背にした渡月橋が青空に映える様は見る者の眼を和ませる。
予定日をあと三日後に控えたあかねに陣痛の気はなく、夫の泰明と共に、元気に駅に来ていた。
「あ、いたいた。蘭!こっち〜!」
その声に、改札からキャリーバッグを手に出て来た美女が顔を輝かせて走って来る。
後ろから背の高い男と、金髪で柔和な顔立ちの少年が呆れた笑いを浮かべながら、やはりこちらに向かい歩を進めていた。
「蘭!久し振り〜!!元気だった?」
「元気よ、あかねっ!すっごいお腹になってるじゃない!」
「だってもうすぐ生まれるもん。蘭達が間に合ってくれて・・・良かった」
やっと、壊れ物のように抱き締めた腕を解いた蘭は、泰明に腕を差し出す。
「お久し振り、泰明さん」
「ああ」
泰明は相変わらず無愛想で素っ気無いものの、眼を僅かに細めている所を見ると、少なくとも歓迎はしているらしい。
そうでなければ出産間近の大切な時期に、自分達を呼んだりはしないだろう。
あかねを溺愛している人物は超が付く程、過保護なのだから。
「よう、あかね」
「あかねちゃん!泰明さんもこんにちは!元気だった?」
「特に問題ない」
「元気だったよ。久し振りだね、天真くん、詩紋くん」
「あかねちゃん、本当にいつ生まれてもおかしくないね」
「そうなの、もう足元が見えないから転びそうで大変なの!」
「・・・・・・お前は妊娠など関係無しに転んでいるが」
「もうっ泰明さんっ!」
久々に見る夫婦のやり取りに三人は懐かしく思いながら、泰明の運転する車へと向かった。
彼らは暫くの休暇を取り、嵐山へとやってきた。
あかねの出産に間に合うように。
そして、明日の為に。
今日は
9月13日
次
戻る