大地の陽番外編 | ナノ


 


よし、あいつが宿から出てきた。

深呼吸だ!落ち着け将臣!!

せめて今日だけはっ‥‥‥!!





「今日は一日俺に付き合ってくれ!!」

「いいですよ、ふふっ」

って、弁慶かよ!!

「えっ‥‥‥将臣くんの好きな人って‥‥そうだったんだ‥‥‥何も解ってあげられなくてごめんね!!」

「違う、待てよゆき誤解だ!!だから行くなぁぁああ!!








最高のプレゼント






8月12日、俺の誕生日。

とにかく年に一度しかない特別な日に、ゆきを独り占めしたいと思っても無理はない。
平家に戻れば彼女に会えない。
だからせめて、こんな時に思う存分ゆきといよう、といつも思う。

だが。



「さて、どこへ行きましょうか?」

「冗談だ、忘れてくれ」

「おや、つれないですね将臣くん」



ちょっと待て。
何が悲しくて、こうなったのだろうか。


本来なら今頃、ゆきと二人っきりで‥

そうそう、こうして腕を組んで‥‥‥‥‥


「って、何でお前と腕を組んでるんだよ俺は!!」

「まあまあ、落ち着いて下さい。まだ僕でいいじゃありませんか。そこらへんの女性など雑草に見える美貌だと言われてるんですから」



すげぇぜ、コイツ。
自分で言って恥ずかしくないのか。



「事実ですから」

「考え読むんじゃねぇ!!」



俺は今、猛烈に平家に帰りたい‥‥‥ゆきを拉致して。


「それは冗談として」

「冗談かよ‥‥良かったぜ、全く‥‥」



一日中コイツの側にいたらやべぇからな!
何を盛られるかわかったものじゃない。



「ゆきさんは僕のものなんで、近付かないで下さいね」

「‥‥‥‥何言ってんだ?」



俺は弁慶を思い切り睨んだ。






  
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