大地の陽番外編 | ナノ


 

「ゆき‥‥‥これはどういう事だ?」

「九郎さん‥‥‥‥‥‥す、素敵ね‥‥‥あはは‥」

「‥‥‥」

「じゃ、じゃあ、私、朔に買い物を頼まれているので失礼しま」

馬鹿かお前は〜〜〜〜っ!!!


「ぎゃ〜〜〜っ!!ごめんなさい〜〜〜っ!!」





それは、陰陽術を学び始めて間もない一日。










jump up story








事の発端を辿るなら、九郎にだって責任はあると思う。

決して自分だけが悪いんじゃない、と言いたい。



言いたい‥‥‥‥が、言える雰囲気じゃない‥。



「で、どうなんだ?」

「それは‥‥‥」

「逃げるな!」


小首を傾げるゆき。
普段なら可愛らしいなと思う所だが、今は余裕がない。

だん!!と音を立て、ゆきを壁に押し付ける。
驚く少女が逃げない様に顔の横に手を付き閉じ込めた。


「馬鹿。俺が聞きたいのは‥‥」

「え‥え〜と‥‥」

「わかっているだろう?」

「‥‥‥ごめんなさい‥‥」


瞼を伏せて俯くゆきに、さすがに追い詰め過ぎたか、と少し後悔する。
だが、はっきり答えて貰ってはいないのだ。とてつもない焦燥を覚える



――今の自分には彼女しかいないのだから――


「ゆき?」


返事を催促するかのように、僅かに顔を近付ける。

びくっ、と震えるゆきはまるで怯える兎のよう。

あと少し、近付いて‥‥‥‥‥




「そこまでです」


シュンッ!


九郎の顔前、僅か小指の先程の距離に光る銀の刃。


「なっ‥何をする!!」


驚いて振り返れば彼の信頼する軍師が、薙刀の刃を向けて微笑んでいた。


輝く笑顔なのに、どす黒く見えるのは何故。


「ゆきさん、こっちへ」

「えっ?‥‥は、はい‥‥」


弁慶の手が伸びゆきを引っ張り込むと背後に匿う。


「何もされませんでしたか?」

「へ?‥あ、はい」

「良かった」


少女の頭を少し撫でて、正面へ向き直る。


僕の可愛いゆきさんを口説こうとはいい度胸ですね‥‥」


ふふっ、と笑ったのと同時に黒いものが増殖したように見える。
はっきり言って凄まじく怖い。


「お‥‥おい弁慶!話を聞け!!」

「僕の事を知ってるなんて光栄です。‥‥‥兎の怨霊、覚悟」

俺は人間だ〜〜〜〜!!

「無駄ですよ。九郎の姿でゆきさんを翻弄するとは許せませんね」

「違う!これはゆきガフッッ‥」

「九郎さんっ!?」

「さあ、行きましょう」









倒れ伏した九郎の頭上には、純白に輝くウサミミが生えていた。








  
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