大地の陽番外編 | ナノ








時空を超えて京に来て、私には『兄』が出来た。



強くて優しくて、少し過保護な兄上。





‥‥‥‥‥ちょっと待てよ、少し?


少しかな?




大切だから




「馬鹿!そんな所で寝る奴があるか!」


昼下がり。

暑さから逃れる為に、お気に入りの場所で昼寝をしていたゆきに、九郎はしかめ面をしている。


「だって暑いんだもん‥‥」

「ここが何処だかわかっているのか?」

「ん‥‥縁側?」


はぁ、と深い溜め息をこぼす九郎に、ゆきは笑いを堪える。


(過保護だなあ)


「何を笑っている?」

「笑ってないよ」

「嘘つけ。笑ってい「信じてくれないの?兄上」‥‥ そうだな!この兄が悪かった!」




九郎は単純だ。

『兄上』の一言で、凄く幸せそうな顔をする。

鎌倉に敬愛する兄はいる。
だが、弟や妹のいない九郎にとって、『妹』として心が通いあったゆきの存在が、嬉しくて仕方ないのだろう。










「九郎さんっ!!大変っ!!」

ドタタタタ‥‥
廊下を勢いよく走る音がすると思えば、半泣き顔の望美が走ってきた。

リズヴァーンとの稽古の手を止めて、望美を見る。



「どうした?」

「ヒ、ヒノエくんがっ‥‥‥」

「‥‥ヒノエ?」


九郎の脳裏に赤い髪の八葉が浮かぶ。
あまり気の合う二人ではない為、殆ど接点がない相手だ。
‥‥‥いや、ヒノエにとって、世の中の男は全て気が合わないだろうが。


「神子、ヒノエがどうかしたのか」

九郎の代わりに、隣で汗を拭きながらリズヴァーンが問い掛ける。



「リズ先生‥‥ヒノエくんが、お酒を呑んで、酔っ払って‥‥」

「酒?」


こんな日中に呑むような人間じゃないはずだが。


「‥‥で、口説き初めて‥‥譲くんを


「譲?」


「はい。で、それを止めようとしたゆきちゃんに、無理矢理呑ませて」

「あかね、あかねあかねゆきに!?むっ無理矢理!?」

「‥‥!こうしている間にもゆきちゃんが危ない‥‥!」

「わかった、行こう」

「私も行こう」

「‥‥‥お願いします!」




(ゆきに一体何が!?)


そう思いながら、九郎とリズヴァーンは望美の先導のもと、走り出した。


(‥‥そういえば、弁慶は‥‥?)


不安が募る。


 

  
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