大地の陽番外編 | ナノ
(相変わらずなんだから)
思い悩む泰明をあかねは見上げて、そっと笑みを浮かべた。
正面から包むように、しなやかな背を抱き締める。
「あかね?」
「‥‥‥泰明さん、空を見て」
ネオンのほとんどない街だから、星は無数に広がっていた。
‥‥‥懐かしいとすら思える満天の、煌き。
「‥‥ああ」
「私ね、時々見守られてるなぁって感じるよ」
腕の中であかねが身じろぐ。
泰明は視線を落とす事無く、妻が星空を見上げたのを感じた。
「‥‥‥誰かに尾けられているのか?」
「そうじゃないでしょ」
真顔で素っ頓狂な発言に思わず笑った。
「‥‥‥時々感じるの。世界が違うのに、私達を見守ってくれる優しい龍神様を」
それは大地のように包んでくれている。
「お前は龍神の神子だった。神と神子の絆が解けるはずもない」
「うん‥‥‥それだけじゃないんだよ?」
‥‥‥泰明さんにも感じるでしょ?
見下ろせば、娘と同じ大きな瞳が温かく泰明を見つめていた。
「皆が、見守ってくれてるって」
「‥‥‥」
眼裏に浮かぶのは
二度と会えぬ者達と過ごした日々。
「‥‥‥ああ」
「だからね、私たちもいつかゆきちゃんに教えてあげようね」
人の想いは残る
たとえ、逢えなくなっても
星になって、ずっと見守っている
ずっと、ずっと、側に居る
永遠ぐらいに長い
子守唄を歌ってあげる
きらきら、星の子守唄
七夕の朝に突発で書いた話。
【人は死んでも想いは星になって、ずっと見守ってる】
これは密かに長編第二部「地上の流星」の第一話にリンクしてたりします。
20080707
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