大地の陽番外編 | ナノ


 


どれくらい走っただろうか?

距離にして10歩くらいか?
角を曲がったら、ゆきが座り込んで泣いていた。



「うおっ!!」



勢いあまって転びそうになったが、ここでコケたら男としてヤバいから、何とか耐える。



「‥‥あ、将臣くん」



涙で真っ赤になったゆきが、俺に気付いて見上げてきた。



「何泣いてんだよ」



ゆきの手を掴み引っ張って立たせてから、俺は聞く。










「‥‥‥失恋、したの‥‥」








「失恋!?」



お前、まだ譲の事を好きだったのか‥‥。

よりにもよって自分の誕生日に好きな女が、他の男を想って泣いてるなんてな。



辛いけど仕方ない。



お前には笑っていて欲しいから。



「‥‥俺で良ければ吐き出せ、な?」



涙を拭って、頭を撫でてやった。

その途端、ゆきの目から涙が止まらなくなって、俺の腕を掴んで泣きじゃくり始める。




「どうしてっ‥‥‥」





そうだな、お前は頑張ったよ。








「どうして私、弁慶さんに負けたのかなあ!?」






「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥弁慶?






「た、確かに弁慶さん綺麗だし物腰柔らかいし。中身は黒いけど!」

「‥‥‥‥‥‥」

「私よりずっとずっと美人で将臣くんの隣がよく似合うのも分かるよ。中身は凄く黒いけど!」

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

「で、でも、に負けるなんて二重に辛くてっ‥‥‥」

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」





おいおいおいおい。
嘆いてるのか悔しいのかわからないけど、何気に弁慶の悪口言ってねぇか?

それに将臣の隣ってなんだ。

将臣って、将臣って‥‥‥‥‥





俺、だよな。




「ちょっ、落ち着け!」


口から零れそうな笑いを何とか押さえて、目の前のゆきを思い切り抱き締める。


「なんで弁慶なんか出てくるんだ?」


「だって、だって‥!!」

「何つーか‥‥‥お前、相変わらずぶっ飛んだ考えする奴だな」



笑いが止まらない。

そうだった。
こいつは時々、何もかもを素っ飛ばした考えをするんだったな。





妙な嫉妬してるこいつがたまらなく面白いから、もう少し様子を見ようかと考える。


だが、お前の涙には弱かった。





「ったくしょうがねぇな」

「‥‥‥‥へ?」

「俺が好きなのはお前だ、ゆき」







今年の誕生日に、
一晩かけてゆきを貰おうか。



「今夜は帰さねぇぜ」

「なっ‥‥‥‥ばかあっ!!」









☆HAPPY BIRTHDAY MASAOMI☆

20080812






  
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