大地の陽番外編 | ナノ
風呂覗きの件は、哀れな二人以外は不問となった。
「えええっ」
ぼやく二人を無視して、大宴会が始まる。
「ところで、あの垂れ幕って何〜?」
「『白龍の神子様を労う会』‥‥‥そうだったんだ」
「初耳だね〜」
「ねっ」
景時が指差した横断幕をゆきが読み上げて、二人でふむふむと納得していた。
「は?誰そんなの飾った奴?」
「私だよ」
「白龍かよ!!と言うより酒飲んでる!?」
「そうだよ、酔っちゃうよ白龍!てゆうか龍って酔うの!?酔うの!?ねえ!!」
「ゆきちゃん!!ゆきちゃん落ち着いてっ!!」
「ヒノエ、ゆきと神子、大丈夫。私は龍神だから酔わないよ火翼焼尽」
「「酔ってるし!!」」
「しかもオレの技じゃん!!」
「ヒノエくんは、私との絆の関を超えてないから使えないはずだよ?」
酔った勢いで炎を吐く白龍に専売特許を取られたヒノエが憮然とし、さらに望美がリアルな話題でヒノエに止めをさした。
(絆の関ってなんだろう‥‥‥望美ちゃん)
きょとんと首を傾げるゆき。
その腕はぐっと引っ張られて、次の瞬間視界は暗くなった。
「‥‥‥ゆきは俺の隣に来いよ」
「将臣くんの隣?‥‥‥ってゆうか、くっさい!酒臭いの嫌だあっ!!!」
「うっ‥‥‥」
将臣、酔った勢いでゆきに抱き着くも、頭突きにより撃沈(合掌)。
「いけませんよ、ゆき‥‥‥将臣くんの隣に行って万一妊娠でもしたら一大事。僕が守ってあげますからこちらへ」
「やだ。弁慶さんも酒臭い‥‥‥私には飲むなとか言ったくせに」
恨めしいゆきの視線。
酔った弁慶は「すみません」とクスクス笑った。
彼は知っている。
‥‥‥ゆきは飲むと酒乱になる事を。
‥‥‥会場の隅ではどこから出たのか、望美がマイクを握っていた。
「宴会と来りゃやっぱりカラオケだよな?」
「えーっ!将臣くんマイク離さないつもりでしょ?迷惑だよ!」
ゆきが望美の手に持つ物に目を付け、顔を輝かせてたたっと走って行った。
「望美ちゃん望美ちゃん、デュエットしよう!」
「OK!―――譲くん?」
「お、俺ですか?嫌で 「譲くん?」‥‥‥‥‥はい」
泣くな譲、男だろ。
望美に睨まれただけで何を御所望なのか分かった(ストーカー)譲は、半べそでイントロを歌い出した。
「♪ちゃらちゃっちゃっちゃらっちゃ〜 ちゃらちゃっちゃっちゃらっちゃ〜♪」
「うむ。ムーディー〇山だな」
「リズ先生、よくご存じで‥‥‥!!」
「九郎。オヤジと呼ばれない為には、常に最新のナウを取り入れねばならない」
「そうだったのですか、先生!」
九郎さん、違うと思います。(ゆきの声)
そして歌は始まった‥‥‥
「♪好ーきーだー!揺るぎなーい視線!!♪」
曲、違っ‥‥‥(by譲)
「♪好ーきーだー!止めどなーい♪‥‥‥止めどなーい‥‥‥あれ?」
「涙だよゆきちゃん」
「歌うの止めろ、望美?ゆき?」
「そうだぜ姫君。そんなダサい歌よりオレの歌の方がいいだろ、ゆき?」
「ダサいって何?俺の歌ダサいって何?」
「ヒノエの歌?あ〜、あれだよね‥‥‥確か‥‥カモメの水平さん!!」
「いつの歌!?」
もはやどう突っ込んでいいのか分からないヒノエ。
こんな扱いを受けているが、実は熊野の偉い人のようだ。
「ゆきちゃ〜ん!!酒だ!!酒持って来〜い!!」
「‥‥‥景時さん、酔うと人間変わるの?」
「え〜?ゆきちゃん、オレは普通だよ‥‥‥?この手を血に染める以外何も出来ないけどね‥‥‥」
「ネガティブやん!!ネガティブなってるでこの人!?」
「譲、関西弁になってるよ」
「白龍、何で関西弁を知って‥‥‥?」
「静かね、敦盛殿」
「静かではないと思うが。朔殿‥‥‥貴女も酔っているのか?」
こうして、敦盛と朔が静かに杯を傾けている前で、宴会は楽しそうに過ぎて行った。
「てゆうかこのマイク木彫りっ!?」
「リズ先生が彫ってくれたんだよ、ゆきちゃん」
「神子の望みが私の運命‥‥‥」
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