大地の陽番外編 | ナノ


 



『落ち葉の絨毯』



そこは、そう名付けるのが相応しいほど落ち葉が積もり重なっていた。



「うわ‥‥‥すっごいね!!」

「ゆきさんなら気に入って頂けると思ったのです」



林の中、茂った樹々の真中にある小さな空間。
踏む度に落ち葉がさくさく音を立てる。


赤く、橙に、黄色‥‥‥暖色の重なる絨毯は、陽の光とあいまって、優しく二人を包む。



「重衡さん!ここに座りませんか?」

「ええ。ゆきさんが望むなら」


先に座ったゆきを暫し見つめて‥‥‥ふと思い付いた。

徐に、彼女の後ろに胡座を組む。


「えっ‥‥‥重衡さん?」


首を傾げるゆきを、背後からそっと包んだ。


途端に固まる華奢な身体。


少しは自分を男として意識しているらしい。
そう思うと、もっと困らせてみたくなった。



「ちょっ‥‥‥」



肩に置いた腕を腰に回して、ぐっと引き寄せる。

そうすると、密着する二人の体温が少し高くなった。


「‥‥‥ゆきさん、どうかしましたか?」


耳元で囁くと、頬が真っ赤に色付く。


‥‥‥もっと、もっと。


困らせてみたくて
自分を意識させたくて。

もう一度、耳に唇を近付けた重衡の眼前に迫る、茶色く丸い物体。


「仕方ないなあ、はい!」

「‥‥‥‥‥‥は?」


差し出された、と言うよりは眼前に突き付けられた団子の串。
流石の重衡も固まった。


「そんなに拗ねる位なら、欲しいって言えばいいのに。変な重衡さん」

「‥‥‥ゆきさん?」

「団子、早く食べないと全部貰いますから、ね?」


(拗ねている、ですか)

この体勢の、あの言葉の、一体何処を取れば『拗ねて』いるのだろうか。


「ふふ‥‥‥はははっ」


鈍いにも、程がある。
重衡は込み上げる笑いを止められず、ゆきの肩に顔を埋めた。


ゆき流の照れ隠しなのか、本当に気付いてないのか‥‥‥はたまた両方なのか。


「重衡さん?食べちゃいますよ?」


この時、重衡が顔を上げたなら気付いただろう。


ほんのり色付く桜色の頬。その意味を。



だけど膝上に座る少女の肩で眼を伏せ笑う彼は、気付かない。
それでも重衡は微笑んだ。

柔らかい身体から伝わる鼓動は、
とても高くて速いものだと知ったから‥‥‥。







‥‥‥ゆきの腰に回した手に、ぎゅっと力を入れる。


「私の両手は塞がっておりますから、食べさせて下さいね?ゆきさん」

「はい!って‥‥‥‥‥‥えええっ!?」

「ふふっ」









自分よりずっと華奢な指から、
団子をゆっくり食べ終える。



それでも重衡は腕を解かずに

ゆきも何も言わなかった。







二人を見守るのは
かさかさ落ち葉の囁く声のみ。







 

  
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