光と闇の逢瀬(1’×1)


「ほう、それが事の顛末か」

 タンブラーにモルトウィスキーを注いで渡すガーランドに、受け取りながら光の戦士は頷く。

「だから彼奴が悔しそうにしていたと言っていたのか」
「お前自身で把握していなかったのか?」

 タンブラーを傾けながら光の戦士はガーランドの言葉に首を傾げる、ガーランドは苦笑を洩らす。

「実はな…その話はこの前、ジェクトと共に飲んでいた時に奴から聞いたのだ。流石に彼奴も儂に直接は…」
「そうか…私と彼が神経をすり減らしていた事は貴様等にとっては単なる酒の肴か……」

 タンブラーを静かにテーブルに置いて光の戦士は右手を強く握り締めるのを見、怒らせてしまったとガーランドは顔には出さないが内心で焦り誤魔化す様に咳払いをする。

「…ま、まぁ、仕方あるまい。その代わりと言ってはなんだが、当分は大量のイミテーションを用いた作戦は無いと思え」

 ガーランドから語られた情報に光の戦士は目を瞬かせる。

「良いのか?混沌の筆頭たるお前がそんな話を軽々しく口にして」
「話の種を提供してくれた礼だ。それと、姑息な手で傷付けた事に対する詫びと思って受け取れ」

(後、少年に対する感謝でもあるがな)
 ガーランドの情報提供の理由に釈然としない光の戦士を見ながら、ガーランドは心中で付け足す。
 恐らく、あの少年がいなければこの男は仲間への負担を考え、その負担を『除去』する行動を取っていただろう。
 仲間に対しては深い情愛を見せるのに、いざ自分の事になると酷く軽薄な男だ。己の存在価値を全く把握していないこの秩序の盟主をガーランドは哀れだと常々思っていた。

 ガーランドは立ち上がり、光の戦士の横に立つ。横に立つガーランドに光の戦士が顔をそちらに向けると、指で顎を掬い上げられガーランドが何をしたいのか分かり――。

「――ッ!」

 ――顔を逸らした。

「どうした?」

 光の戦士の拒絶の反応にガーランドが不思議そうに尋ねると、光の戦士はすまなさそうに目を伏せた。

「すまないガーランド。彼を守りたいが為とはいえ、私は奴に――」

 逸らしていた顔を無理にガーランドの方を向けられ口を塞がれた、突然の事に光の戦士は目を見開く。黙らせる事に成功したガーランドは軽く音を立てて離した。

「心にも無い事を言うな、ウォーリアオブライト」

 手の甲と指先で滑らかな頬を撫でながらフルネームで呼べば、ぴくりと肩を震わせる。

「貴様は盟友を守る為に選択したのであろう?誇りにこそすれ、恥じてはおるまい」

 違うか?と問えば、目を見開いていた光の戦士は一つ瞬き、ガーランドを真っ直ぐ見る。

「勿論だ」

 返ってきた答えにガーランドは満足気に頷く。

「だが、ガーランド…こんな私を愚かだと思うか?」

 光の戦士の言葉にガーランドは一笑に付した。

「それでこそ我が宿敵よ」

 光の戦士は目を閉じ、その言葉と共にガーランドの口づけを受け取った。
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