結んで解けて

 刹那、褪赭色の大きな瞳から光が消え失せた。驚きで見開かれた目に絶望が宿る。絶えず笑みを浮かべ続ける美しい顔から笑みが消え能面のような顔になった。すべての感情を廃した背筋が粟立つほどに恐ろしげな表情。それがすぐさま笑顔に上書きされていく。
「おや? 社長、怪我をしているようですがどうしたのですか?」
 柔らかな声が問いかけてくる。瞳の中に光が戻っていた。にこにこと笑顔を向けられるのに戸惑いながらも福沢は問われたことの答えを返した。
「ああ。少しへまをしてな」
「そうなんですか。与謝野先生に治してもらわないのですか?」
「そこまでのものでもないからな」
 問い掛けに返していると視界の端で事務員の頭が何度も上下に下がるのが見えた。その近くでは話題に上った与謝野がつまらなそうな表情をしている。それを見、そして目の前にいる太宰からの視線を感じて福沢は己の首筋を触った。数時間前に外で絡まれていた事務員を庇いついた傷。斜めに走る刃物の傷ではあるが浅く包帯を巻くほどのものでもない。まして一度瀕死にならなければ治らない与謝野の治療を受けるほどでもなかった。
「……そうなのですか」
 少し遅れて太宰の声が聞こえた。福沢はそれに僅かに眉を寄せる。先程から何処か様子がおかしい。最初に見せた表情の変化も気になる。半秒にも満たないような間の変化で他の誰一人気付いていないが福沢は確かに見た。どうかしたかと問い掛けようとした。問い掛ける前に太宰が次の話を始めてしまう。口を挟む暇もないほど流暢に告げられていくそれら。そしてにっこりと頬笑む顔は福沢から言葉を奪う。



 その日の夜、寝入っていた福沢は気配に気づき目覚める。音を立てぬよう慎重に近付いてくる気配に脳は瞬時に覚醒し、布団のなかで動きやすい体勢をとる。目は閉じたまま。眠った振りをしながら相手が近付いてくるのを待った。ゆらりと福沢の傍に何者かが立つ。静かに見下ろしてくる気配。そして次の瞬間には振り下ろされてくる何か。素早く横に起きあがり振り下ろされた手を掴んだ。何者かのの体勢を崩させ、上に乗り上げる。布団の上に刃物が転がった。
 驚愕に福沢の目が見開かれた。
 襲ってきたのはよく見知った相手。暗い部屋。その部屋よりもずっと暗く輝きのない目が福沢を見つめる。へらりとその口許が笑みを作る。震えたそれは笑みと呼ぶにはあまりに禍々しかった。
「何のつもりだ。太宰」
 福沢が襲撃者の名を呼ぶ。三日月に細められた目からは何の感情も感じない。
「私、貴方を殺さなくちゃいけないんです」
 のっぺりとした何も感じさせない声が太宰から聞こえた。その声にそしてその声が告げた内容に福沢の目が見開く。何をと驚きを含んだ声が福沢からでるのに太宰の口許からふっふと笑みが漏れでた。笑ってはいるもののそこには楽しそうな感情など欠片も浮かんではいなかった。
「そしたら私死んじゃうんですけど、でも殺さないといけないんですよ」
 福沢の下、太宰が身じろぐ。何とか抜け出そうと試すがかっちり抑えつけられていて抜け出すことは叶わない。また太宰が笑う。でももう無理そうですね。失敗しちゃった。空気を震わせながら笑い弾んだ言葉を口にする。だけどその言葉は一つも楽しげではなく、のっぺりとして張り付いたような印象しかもたらさない。クビにして良いですよ。軽く太宰が口にする。
「社長を襲うような部下などいていいはずありませんしね。クビにしてどうぞ軍警にでも引き渡してください」
 抜け出そうともがくこともやめ太宰はその肢体を横たえる。力を抜きあっさりと投げ出される両手。暗い目をした瞳が瞼の裏に隠される。何なら殺してくれても良いのですよ。貴方の好きにしてください。そう言葉にされ福沢は太宰を見下ろす。眉間に深い皺を刻みながら見つめる。圧を感じ怯えさせることの多い表情も目を閉ざしてしまった太宰には意味がない。
 ゆっくりと福沢は掴んでいた太宰の腕から手を離した。体を起こし拘束を外す。それでも太宰は動かなかった。投げ出されたままの身体。
「もう遅い。今日はここで寝ろ。私は別の部屋で寝る」
 その姿を見つめそしてかけた言葉。太宰の目がぱちりと見開く。驚いたような様子で見つめてくるのに明日もちゃんと探偵社に行くようにと告げる。クビにするつもりはないと声に出せばますます見開く太宰の目。部屋をでようと襖を開ける。枠を一歩越えた所で太宰の声が聞こえた。社長と福沢を呼ぶ声。振り返り見た太宰の瞳には相も変わらず色がなく光一つ通さない。その目が僅かに泣き出しそうに震えた。
「貴方は甘いですね。そんな貴方だから私は貴方を殺さなくちゃいけない。だけど、
 もういいです。もういい」
 ことんと太宰の首が畳の上に転がる。癖の強い黒い髪が彼の顔の半分を覆い隠す。ねえと呼び掛ける声がする。刀をなくしたことはありますか。問い掛けられた突然の問い。何故そのようなことを今。戸惑うのにありますかともう一度問い掛けてくる。少し考えてあると福沢は答えた。その時の記憶は。何処でなくしたか。何故なくしたか分かりますか。重ねて問いかけられる問い。迷いながらいやと福沢は口にする。そうですかと太宰は口にした。何かに納得したような口ぶり。そして唐突に太宰は笑い出す。あっははと狂ったように声をあげ布団の上で身をよじり腹を抱えて笑う。あまりに激しい動きで笑うためその体の半分以上が布団から外にはみ出した。くすくすと笑みは止むことを知らない。
 突然の太宰の奇行に驚きどうしたと福沢が声をかけようとした時、太宰の動きがぴたりと止まった。今だ光を宿さぬ目が福沢を見る。
「おやすみなさい。社長。明日は良い一日になるといいですね」
 にんまりと貼り付けられた笑みは背筋が凍り付くほどに恐ろしい笑みだった。
 その言葉の真意を福沢は朝が明けてから知ることになる。



 その翌日、福沢が目覚めると既に太宰はいなくなっていた。何時出ていたのか福沢には全くわからなかった。朝食を食べ支度を整える。何時もの朝を送りながら福沢はずっと太宰のことを考えていた。昨日の太宰の異様な姿。何を考えているのか。何度か福沢の手が首もとの傷に触れる。太宰が変わったのはそれを見てからだった。薄くついただけのその傷に何があると云うのか。考えながら過ごし家をでる時刻になって立ち上がる。こんなとき頼りになる乱歩は二日ほど前から出張で遠方に出向いている。帰ってくるのは明日の夜。それまでに何もなければいいがと思った思いはあっさりと裏切られる。
 社へと向かう途中、福沢は数人の輩に取り囲まれた。どうやら昨日事務員に絡んでいた輩の仲間達らしい破落戸共。取り囲まれたと云ってもいきっているだけの輩など福沢の敵ではなかった。全員に地面に転がしていく。だかそこで一つの過ちがあった。破落戸の中に一人異能力者が混じっていたのだ。その男に触れたとき辺りが眩しい光に包まれる。咄嗟に手を離そうとしたが遅い。

 気付いた時、福沢は何処かの施設内にいた。
 濃い臭気が漂う。覚えのある鉄臭い臭いは血の臭いである。周りには死体の山。この施設の研究員かなにかだったのかみな白衣を着ていた。白いそれがどれもこれも赤く染まっている。
 福沢はその光景に覚えがあった。施設内を見回す。人は己の他誰もいない。呆然と福沢は立ち竦んだ。そこに悲鳴が聞こえた。
 それは遠くから聞こえた小さな悲鳴。施設の外からの悲鳴に福沢は動いていた。窓を蹴破り外に出て山の中を走る。女の声が耳に届いた。悲鳴ではない。何かを云い叫ぶ声。その声がより聞こえるようになるにつれ、福沢の顔に焦りが浮かぶ。間に合ってくれと必死に足を動かす。道の鋪装をされていない山の中福沢はもはや獣に近い早さで走っていた。声が一段と大きく聞こえた。
 誰かの背を捉える。
 その背が福沢の目の前でぐらりと揺れた。
 足の動きが止まる。呆然と目の前の光景を見つめる。生臭い鉄の臭いが広がった。あの施設から福沢が連れてきたものではない。今この場で新たに臭っていた。真っ赤な血が地面に流れ落ちている。ぽたぽたと垂れ落ちていくそれ。黒い髪の後ろ姿が見える。何かにおぶさるようにして立っていたその姿が、ゆっくりと倒れていく。黒い髪の隙間から幼い子供の姿が現れる。
 血に塗れ能面のような顔をした子供。その手にはしっかりと刃物が握られていた。
 子供の目に光はない。
「……だ、ざい」
 零れ落ちた言葉。子供の目が福沢を見た。

   ※※※


 暗い闇の中、その目はその闇よりも暗く光を通さない。そんな目が福沢を見上げ赤く血濡れた刃を向ける。だが福沢の意識がそちらに向くことはなかった。子供の顔に全ての意識が奪われ動けないでいた。落とした言葉が全てだ。
 目の前にいる子供は太宰にとてもよく似た顔立ちをしていた。他人の空似と思うには余りにも似すぎた顔立ちを。福沢の足が無意識に一歩進んだ。子供の手が動く。
 真っ直ぐに刃を向ける。
 福沢の意識が刃に向いた。赤く濡れててらてらと輝く鋭い刃物。ぽたりと赤い血が滴り落ちるのに福沢の目線が下に下がり、そこに転がる女性を見つめる。真っ赤な血の海に横たわる女の頬は蒼白く痙攣一つ起こさない。死んでいるのは歴然であった。さらにその奥を福沢は見る。
 子供の後ろ、そこにはもう一人倒れていた。がたいのいい男。短い髪が乱れ、その腕は何かを殴ろうとしたかのような形で終わっている。そこに広がるのも血の海だった。
 一歩福沢は歩を進めた。子供は刃物を握りしめたまま動かない。そんな子供を見て福沢の目はまた下を見る。赤い血そこに横たわる女性。俯せに倒れた女性の顔がほんの少しだけ覗く。それは酷く太宰に似たものであった。女性である分、幾分か丸く柔らかさがあるが、太宰に、目の前の子供に似通っていた。
……せいで!
 福沢の耳にここに来るまでに聞いた声が甦る。甲高いそれは女のものであったように思う。最初に聞こえた悲鳴と同じ声がずっと何かを叫んでいた。罵っていた。
アンタ何かがいたから! アンタのせいで!
 今度こそ福沢は子供に向けて歩を進めた。刃を向けてくる子供の目は焦点があっておらずひたすらに暗い。切っ先ギリギリまで福沢が近付く。真っ直ぐに突き付けられていた刃が僅かにぶれた。福沢の大きな手が子供の小さな手を握る。ぴくりと肩が跳ねる。
アンタ何か産まれなきゃ良かったのよ
 優しく子供の腕を下に向ける。暖かな手が子供の頭に回った。ゆっくりと撫で、恐がらせないようにゆっくりと抱き寄せる。抱き寄せた体は見た目では気付かぬほどに小さく震え続けていた。もう大丈夫だと低い声が囁く。
 暗く黒い目は福沢を見上げた。何処を見つめているのか分からぬ目が福沢の方に向き、それから口を開く。あ、と掠れるような音を出した。口を一度閉じてから殺さないのと問い掛ける。
 手を抑えていた片手を離し福沢は両手で強く子供を抱き締めた。大丈夫だともう一度囁く。
死んでしまえ
 女性の声が甦った。何かを殴ろうと姿で事切れている男性の姿が浮かぶ。
 大丈夫だ。力強い声で告げる。ぎゅっと強く抱き締める。もう大丈夫だ。
 カランと音がなった。
 子供の手から力が抜け刃物が地面に落ちていた。


  ※※※


 やはり、そうか。
 零れ落ちた言葉。暫し福沢は立ち尽くした。その手からばさりと落ちたのは新聞で先ほど投函されたものであった。
 昨夜動かなくなった子供を抱え、山を降りた福沢はかつて使っていた屋敷へと足を向けた。家へと向かわなかったのは予感があったからだ。
 鍵は掛かっていたがかつて隠していた場所を見ればそこにあった。中に入れば見覚えのある光景が広がる。
「何か食べるか」
 痩せ細った子供に聞いた。げっそりと落ち窪んだ顔。骨ばかりの腕。そんな姿をしながら子供はふるりと首を降る。真っ黒な目は何処か遠くを見ていて。
 福沢はかつて寝室として使っていた部屋に向かった。そして押し入れを開き布団を取り出した。子供を抱えたまま引き終えるとそのまま横になる。こびりついた血の臭いが漂う。臭うなとは思った。だがそれよりも今は凍りついたように動かない、瞳孔が開いたままの子供をどうにか休ませてあげたかった。
 大丈夫だ。もう大丈夫だ。
 福沢は何度も子供に向けて囁いた。大丈夫だ。背を叩き頭を撫でながら何度もその言葉を繰り返す。
 どれだけそうしていただろうか。長い時間が経ってやっと子供は見開いていた目をゆっくりと閉じた。
 はぁと小さな震えた吐息が漏れ、それがやがて息を潜めた寝息に変わる。そこで声をかけるのを福沢はやめた。立ち上がろうとすればぴくりと震える体を時間をかけて抱えあげた。起こさぬよう慎重になって身を清め服を着替えさせる。それからまた部屋に戻った福沢は子供と共に眠りについた。
 確かめねばならぬこともあったが、それは今日に回し子供の傍にいることを選んだのだった。
 そして朝目覚めた福沢は家のなかを見て回った。今はもう契約を解除しているはずの電気も水道も全て使えた。引っ越しをしたとき捨てたか或いは今の住居に持っていたはずの家具なども全てあった。
 その時点で確信しながらも福沢はそれをさらに確固たるものにするため届いた新聞を広げた。
 そうして確認したのは日付の部分であった。
 それを見つめ溢した言葉。落ちた新聞。
 予感はあった。
 突然どこぞの研究所に飛ばされたときからほぼ確信していた。だが信じることが出来ずにいたことが真実と知り福沢は一瞬呼吸を止めた。
 がさりと後ろで音がした。振り向けば入り口の前に無表情でたつ子供がいる。福沢の目元が震える。震えながら子供を見つめた。
 新聞に書かれた日付は十五年も前のもの。
「太宰」
 福沢が子供に向けて呼び掛けた。子供は動かない。ぼんやりとした目で福沢を見つめてくる。
「治」
 ごくりと、唾を飲み込む音が大きく響いた後、福沢が口にしたのは太宰の下の名前。
「何」
 子供が答えた。ひゅっと息を飲む音がする。見開かれる目。子供は太宰によく似た子供などではなかった。
 太宰そのもの。
 福沢たちが出会う前。誰も知ることのない十五年前のまだ幼い太宰治。
 真っ黒で光を通さない目が焦点も合わないまま福沢を見つめ続ける。その顔はお面のように動くことをしない。
 福沢の脳裏に太宰の姿が浮かんだ。浮かぶと同時に福沢の体は動いていた。数歩分離れていた距離を一瞬で縮め幼い体を力一杯に抱き締める。一瞬で身を強張らせた子供。だがその後は身動ぎ一つしない。福沢に抱き締められるまま暗い目を何処か遠くに向けていた。


「どうした」
 福沢が声をかけると子供は真っ直ぐ福沢に顔を向ける。
 あの後すまないと離れた福沢を子供はただ見つめた。その目の前に手を差し出しご飯にしようと誘えば、今度はその手に目が行く。黒い目が僅かに揺れた。垂れ下がっていた手が微かに動く。伸びようとして下に落ち、また伸びようとする。その動きを何度か繰り返してからぱたりと動かなくなってしまった。
 その手を福沢がそっと取った。握り締める。短い距離を確りと握り締めて歩いた。握り締められた手を太宰はじっと見ていた。
「どうした。食べないのか」
 問い掛けたのに子供が福沢を見上げる。じっと見上げながら何も云わない子供はしばらくして目線を下に落とした。子供が見つめるのは机の上、そこに置かれた朝食の膳であった。膳の上には味噌汁に焼き魚お浸し白米とこれぞ日本の朝食と云ったものが並んでいた。子供は先ほどからそれを見つめるばかりで箸に手が伸びることがなかった。食べていいのだぞと何度か声を掛けているがそれでも動かない。もしや朝は洋食派だったかと考えもしたが、まだこの時代はそう云ったものは普及していなかったはすである。一体なんだと子供を見つめる。
 そうしていると子供がまた福沢を見上げた。黒い目を見つめ返すとふとその目が己の顔ではなく手元辺りを凝視していることに気づく。焦点がぼやけていて気付きにくかったのだがどうやら子供が見ていたのは福沢と云うよりその手元、箸であるようだった。箸がどうかしたのかと福沢が子供を見つめる。暫し無言の時間が続いた。
 暖かそうに立ち上っていた味噌汁の湯気が消え冷めてきた頃に漸く子供が動いた。福沢の手を見ながら膳の上に置かれている箸を手に取る。そして辿々しい手つきで持ち始めた。表情を変えぬまま何度か箸を持ち直す。目の前の料理をつまもうとしてつまみそこなう姿に福沢は驚愕した。
 子供が食べなかったのではなく食べられなかったのだと云う事実に思いあったったのだ。箸を歪に扱う子供にもっと使いやすいスプーンなどのものをと思い慌てて立ち上がろうとしたが、そういえば自分の家にはそう云ったものを置いていなかったことを思いだし動きを止める。子供を見やれば黒い目を福沢に向けていた。どうするのかと窺うようなその様子に福沢は一度止まっていたのから立ち上がる。そして子供の元へと歩み寄った。
 子供の後ろに回り少し触るぞと声をかけてから小さな手を取った。箸を歪に持つ手を正しい握り方に変え、それから一つ膳の上の食べ物を掴ませた。口元に運んで食べるよう促す。一度福沢を見上げてから太宰は口を開いた。
 口の中にいれ飲み込むまでを見届けてから手を離す。
「今のようにやるのだが分かったか」
 問い掛けたのに言葉は返ってこなかった。ただじっと見上げた後に前を向き同じ動きで箸を使い食べ出していた。食べる姿を見てホッと息を吐くと同時に福沢の目は険しいものへと変わった。
 この世界は十五年前の世界。
 ならば子供は六・七歳の筈であった。六歳であるなら多少辿々しくとも普通であればお箸の使い方ぐらい知っている頃だろう。六歳とは思えないような明らかに小さな体といい一体どういう生活をさせていたのかと、昨日死んだ子供の両親を締め上げて聞き出したい気持ちに刈られていた。だが、そのようなことはできるはずもなく、何より昨日の光景こそが全ての答えだと思った福沢はせめて自分がいる間はまともな生活をさせてあげようと決めるのだった。
 時間をかけて食べ終わった子供が福沢を見上げた。


 中略

 はっと、目を開けたとき福沢は何処かに横になっていた。見上げる視界に映るのは見覚えがあるような気のする天井。首を捻り見えるのは見馴れた探偵社の事務室であった。慌てて体を起こす。そこが太宰がよく眠って過ごしているソファであることに気付いた。帰ってきたと思う暇もなく立ち上がる。
 嫌な予感がしていた。
 足を一歩前に進める。扉に向かおうとしたとき、その扉が開いた。
「社長!!」
 驚いた声が聞こえる。汗だくになりながら目を見開いた社員達が福沢のもとに駆け寄ってくる。
「今まで何処に」
「大丈夫ですか!」
「何があったんです」
 次々とかけられる言葉たち。焦りホッとした様子を見せる彼ら。心配をかけてしまっていたのだと思う。それでもと福沢はそれらに言葉を返す前に、
駆け寄った社員の中からたった一人の姿を探してしまった。
「おさ、太宰は!!」
 鋭い声がでた。えっと回りが目を見開く。
「太宰は何処だ!」
 いつになく焦り余裕をなくした声で福沢は再度聞いた。鬼気迫る様子に目をあわせみな首をかしげた。
「太宰さんならちょっと何処かへ行くと云って数時間前から姿をみていませんが……」
 福沢の動きが止まり、呼吸さえもとまる。
「社長!!」
 心配するような声があがるのに返す暇などなく走った。開けっ放しにされていた扉から外に出て階段をかけ降りる。何処に行けば良いのか分かってもいないままほぼ本能で走った。急げと間に合えと声が頭のなかで響く。
 そしてその声に押されるままに走る。思い出すのは幼い太宰と過ごした一週間。それからそうなる前の夜、福沢を殺そうとした太宰の姿。闇を纏った笑み。何も写すことのない瞳。何もかもを諦めたような姿。
 そして突然笑いだしたあの狂気さえ孕んだ姿。
 そうなる前に太宰が問い掛けてきた問いたち。
 刀をなくしたことがあるか。その時の記憶。何処でなくし何故なくしたのか分かるか。
 分からないと答えた。その問いかけの意味が過去に飛ぶことで福沢には分かった。福沢はたった一度刀をなくしたことがある。剣士であった福沢にとって、命より大切だったといっても過言ではなかったものだったのに。その時の記憶はない。何故なくしたか何処でなくしたかそれすらも分からない。何せ福沢は刀をなくしたその間の記憶を一週間丸ごと持っていないのだから。覚えているのは政府からの仕事である組織を壊滅させる途中であったこと。ほぼ完遂したと思ったところからの記憶がない。なにか白い光に包まれたかと思うと次の時には家のなかで倒れていた。驚き何が起きたのか調べても何もわからなかった。分かったのは光に包まれてから一週間あまり過ぎていたこと。
 その時に刀はなくなっていた。
 思い出しながら福沢は走る。
 太宰の姿が浮かぶ。
「私、貴方を殺さなくちゃいけないんです」
 太宰の言葉を思い出す。もういいんです。そう云った言葉の意味を思う。
 福沢の視界の中に川が見えた。幼い太宰と約束したあの川であった。
 その川に架けられた橋の側に人が立っているのが見える。懐かしい緑の着物が風に揺れてはためく。光を反射して輝く銀色が見えた。その銀色が福沢が見つめる先で細い体に突き刺さる。赤い色が映る。砂色の外套が赤に染まっていく。
 ゆらりと人影が揺れた。
 福沢の視界のなかでゆっくりと崩れ落ちていく。癖の強い蓬髪が風の中で踊る。倒れていく体が川の中へと落ちていく。


 名を呼ぶ声が広い空へと轟いた。



「ハァ、ハァハァ」
 荒い息が落ちていく。ポタポタと滴が落ちる。顔を濡らすそれを太宰は呆然と見上げていた。
「ああ」
 細い息が太宰から漏れた。濡れた頬の上にさらに水が落ちていく。
「どうして……、どうして私を生かすのですか」
 助けてほしくなんてなかったのに、掠れた声で太宰はとう。どくどくと血が流れていくのに黙れと福沢が怒鳴る。黙れ、話すなと血を止めようとする福沢が声を荒げるのに太宰は止めなかった。
「ねえ、……分かったでしょ。私は……人間なんかじゃなかったんですよ。人の心を持たない醜い化け物。人になりそこなった何か……」
 ふざけるなと福沢は声にした。太宰の真っ黒な目が見上げる。一週間見続けてきたあの目をする。
「時間をかけて人に擬態する術を身に付けました。ずっと擬態して生きてきた。これからも……、でも……」

 貴方に出会ってしまった。

 震えた声が重い絶望を込めて呟く。
「十五年前に会ったはずの貴方はあの頃とほぼ同じ姿をしていて……、私の事を知らなかった。その時に全て悟りました。貴方は未来から私のもとに来たのだと。だとしたらいつか貴方は私の事を知ることになる。私が人ではないと云うことを。そうなる前に私は貴方を殺す必要があった。殺さなければばれてしまう。ばれてしまえば生きていけない。だから……。
 でも殺せなかった。なら」
 私が最後にできるのは死ぬことだけなのです。
 声にしなかった太宰の言葉が福沢には聞こえた。ふざけるなと怒鳴る。
「ふざけるな云ったはずだ。お前は化け物なんかじゃない。ただの愛らしい子供だと! 今のお前もただの人だ」
 腹の底から声を出して福沢は怒鳴った。手当てをしていた手が止まるのにそれでも怒鳴らずにはいられなかった。
「人の心を持たぬ化け物だと。お前がそんなものであるはずがない! 擬態するも何も初めからお前は人なのだ! ばれるも何も最初から人であるお前の何がばれると云うのだ!」
 太宰が黒い目で見上げる。無表情で何も変わらない顔。だけどほんの少し瞳孔が開いてる。驚き理解できないでいるときの目だ。分かりづらいだけ。十分な愛情を与えられずにうまく育つことができなかった。それだけ。自分ですらも気付けなくなってしまっている。それだけのことなのだ。
「お前は人だ。ちゃんと人の心を、感情を持っている。化け物なんかではない。死ぬ必要などないのだ」
 福沢の声が鼓膜を叩く。太宰の目が微かに揺れた。ああ、悲しんでいるのだと思うと、福沢の胸もまた張り裂けそうなほどいたんだ。すまぬと声が落ちた。泣き出しそうになるのに唇を噛み締める。ぷつりと薄い皮膚が切れて、唇に血が滲んだ。
 すまぬ。
 声が落ちるのを揺れる目が固まりながら見ていた。じっと見つめてくる不思議そうな姿。
「私がもっと考えてお前の事をきめるべきだった。もっと他に良い選択が何処かにあったはずなのにお前が傷付かないですんだ選択が」
 血を吐くような声で福沢がそう云うのに見上げてくる目は虚ろなままだった。虚ろなまま首がゆっくりと傾く。
「別に貴方のせいではないでしょう。貴方に紹介された人は私に良くしてくれました。だけど何処かで私の持つ異能が外の奴等にばれてしまった。異能力者に銃を持つ十数人に囲まれてしまえば以下な強者と云えども一人で守りきることなどできない。
 むしろ私が貴方に謝らねばならないのかもしれませんね。私なんかのせいで貴方のお知り合いの命を奪われてしまったのだから。私みたいな化け物の「違う」
 太宰の言葉を奪い福沢はまた怒鳴った。
「違う。お前は化け物ではない、お前のせいでもない」
 揺れる目を見て福沢は太宰に手を伸ばした。その上半身を抱えあげ抱き締める。水に濡れた蓬髪を幼い太宰にしたように優しく撫でた。その瞼がわずかに震えた。警戒し、それから元に戻る。大丈夫だと受け入れる。黒い目を瞼の裏に隠す太宰に福沢はそっと息をはいた。
 何とか止血を終わらせることはできたとはいえ、痛いのだろう。血を失い青白い口元からは荒い呼吸を繰り返している。与謝野を呼ばなければと思いながらもすぐにはできなかった。
 太宰の言葉が福沢のなかを巡る。太宰が福沢を殺そうとしてきたあの日。暗い声で告げた言葉。
「貴方を殺したら私も死んじゃうんですけど」
 その言葉を聞いたときは探偵社に捕まり、軍警に引き渡されることを云っているのかと思ったが、今は違うとわかる。幼い太宰に会う前に福沢を殺すことで福沢と会うと云う過去を亡くし、それによって死ぬと云うことだったのだ。
 やはり託すべきだったのかと福沢は考える。過去にいる間何度も同じことを考えていた。過去の自分にメモを残し、幼い太宰を託すべきではないのかと。そうしたらこの子の未来を守れるのではないかと……。太宰の話を聞いた今より強く思う。でもできなかった。
 過去の福沢には太宰を側に置くほどの余裕がなかった。そのことを福沢自身が良くわかっていた。あの頃の福沢は道に迷っている途中。太宰を守り導くことができる存在ではなかった。だからこそ手放したのだが、やはり託すべきだったのか。
 あの一週間を太宰が幼い自分が生きていくのに必要な時間だったと考えてくれていたのなら。そうしていれば何かが変わったのでは。
 今、笑っていてくれたのでは……。
 選べなかった自身を責めながら福沢は太宰を抱き締める腕に力を込めた。意識を失った太宰はあの頃のように潜めた息をはく。
 動かない人形の顔を見つめる。冷たい体。それは初めてあったあの夜のように細く痩せ細っていた。

 ※※※

「太宰」
 福沢が呼び掛けるのに太宰の黒い目が見上げた。じっと動かない太宰に福沢は口を開けるよう促す。箸を口許に押し付けると小さく口が開いた。その中に押し込んで離す。
 福沢が過去から帰ってきたあの日から太宰は壊れてしまった。


 あの後すぐ与謝野がやって来てその場で簡単な治療を施した。そして探偵社へと担ぎ込んだ。すべて乱歩の指示のお陰で太宰の傷は大きかったものの命に別状はなかった。何が起きたのか知りたがる社員に福沢は語ることをしなかった。心配をかけてしまった手前、話さなければならないと思いながらも何も云えなかった。
 目覚めた太宰はいつも通りみんなの前で笑っていた。それに安心したわけではない。ただ一週間も行方不明になっていたせいで、各所に迷惑をかけていた。その挨拶回りや貯まっていた書類仕事を終わらせるのに忙しかった。五日ほど太宰に声をかけることができなかった。
 やっと全部が終わり福沢にも時間ができた。探偵社からの帰りにスーパーによって太宰のすむ寮に向かう。本来なら明日にでもするべきところだが、気持ちを抑えられず太宰の部屋まで押し掛けた。だがチャイムを鳴らしても太宰はでなかった。いないのかと思い帰ろうとすれば、ばたりと何かが倒れる音がドア越しに聞こえた。
 ぎょっとして福沢はドアを叩くが返事はなかった。何かが落ちただけだと云い聞かせながら、かなりの音であったそれに胸騒ぎがした。思わず握り回したドアノブ。外開きのドアは簡単に開いた。福沢の目が見開く。
 ドアを開けて飛び込んできたのは玄関に倒れ付した太宰の姿だった。
 駆け寄って太宰の名を呼ぶ。息はしていた。抱えあげてみると目が見開かれている。その表情に動きが止まった。それはずっと見てきた表情だった。
 太宰の目がぎょろりと動いた。ハッとしたように起き上がりながら福沢を見て固まる。
「社長……」
 確認するように告げた声。暫く固まってから起き上がっていた体から力が抜ける。
「いいや。貴方ならもういいや」
 投げ捨てるようにその言葉を落とした後、太宰はまた動かなくなった。目は開いている。息もしている。それでも壊れたように動かなくなった。何がなんだか理解できないでいるなか、それでも福沢は太宰を抱え部屋のなかに入った。部屋のなかには埃が溜まっていて数日間生活をした様子がまるでなかった。太宰を壁に凭れかからせ座らせると福沢は簡単に部屋の中を片付け眠れるように布団を整えた。ゆっくりと横たえる体はこの間の時よりもさらに痩せてほぼ骨だけになっていた。布団にいれても太宰は目を閉じなかった。見開いたまま横になっている。どうしていいか分からず取り敢えず電気を消した。
 その日福沢は太宰の横でずっと太宰の様子を見ていた。朝になった。一晩太宰は起きていた。横になったままぴくりとも動かずただ横になって起きていた。朝になっても太宰は動かないまま時間が過ぎていく。出社の時刻が近付くのに声をかけるべきが迷う福沢の前で太宰はある時がばりと、起き上がった。そして一直線に部屋を出ていく。福沢もそれに続いた。部屋を出て扉を閉めた途端太宰の様子が変わった。
 見開いた目、閉じられた口。固まったように動かなかった表情が動き笑みを作る。瞳に輝きが戻った。そして福沢をみた。あれ? と声をあげる。
「どうして社長がいるのですか?」
 問いかけてくる太宰。覚えていないのかと福沢は声にした。何をですかと太宰が首をかしげる。言葉をなくす福沢に早く行かないと遅れてしまいますよと明るい笑みが云った。


 その日太宰は何時も通りだった。
 適当に仕事をしては国木田を怒らせ敦や谷崎を困らせる。何時も通りな日々を送り、その表情をころころと変えていた。仕事が終わった後福沢は太宰と共に帰った。話がある。お前の部屋に行かせてくれ。そう告げればあっさり太宰はいいですよと答えた。渋るかと思っていたがそんな様子は欠片も見せなかった。あっさりと福沢が太宰のスペースに入ることを太宰は許した。帰り道、太宰は様々な話をした。大半はたわいもない明日には忘れていても問題もないような話。国木田や敦、谷崎と云った探偵社の面々の下らない日常の話が多かった。ただそのなかに太宰の話はなかった。
 部屋にはいるまでその話は続いた。まるで話をやめたら死ぬのではないかと思うほど太宰は話す。だが、部屋に入った瞬間に話は止んだ。話処か動きのすべてが止まった。
 手足が動かなくなり、表情が固定される。福沢が何度呼び掛けてもその状態から変わることはなかった。人形のように成り果てた太宰を抱えて福沢は悟った。

 太宰は生きることを放棄しようとしているのだと。

 まだみんなの前では人でいようとする意思があるのだろう。探偵社には出社してきて何時も通りに振る舞っている。だがそれが終われば生きることを放棄し、動くこと処か思考することすら棄ててしまったのだ。
 今の太宰は息をしているだけ。人形と同じだった。
 このままではまずいとすぐに思った。今はまだいい。みんなの前だけでも人でいようとしている。でもそれがなくなってしまえば。
 太宰は永遠に動くことを止めてしまうだろう。どうにか太宰を元に戻さなければ。だがどうすればいいのかわからなかった。兎に角何とか生きるために必要な食事などは取らせなければとそれだけは思いつき、立ったままの太宰を中にいれようとした。
 動かない太宰の手をひいた。
 よろけながら足が一歩動いた。転けないように注意しながら太宰を家のなかにあげる。殆どもののない部屋。かろうじてある机の上に座らせてから台所に向かった。太宰の家の冷蔵庫は驚くほどに空っぽであるのは昨日のうちに知っていた。だが昨日福沢が太宰の家に来る前に買ってきた食材は何とか入っている。何か太宰に作ろうと思って持ってきたそれを昨日は使うことができなかったが今日は使う。台所を使っていいか太宰に聞くことはしなかった。聞ける状況でもなかった。
 作り終えた福沢は太宰の前に膳を置く。固まったままの太宰は動かなかった。隣に座り福沢が箸を持つ。あーーんと口の前に差し出すのに太宰は動かない。それでも根気強く口許に押し付け続けるとようやく太宰は口を開いた。口のなかに入れれば数回だけとは云え咀嚼して飲み込んでくれた。同じことを繰り返す。大きなものや固いものは太宰の様子をみ、危険だと判断して避ける。明日からは小さめに切り、固いものはできるだけ入れないようにしようと考えながら福沢は太宰に食べさせた。
 食べさせ終えると太宰を風呂に入れそれから眠りにつかせる。横になっても目を閉じない太宰。そんな太宰の横に横たわる。目を閉じさせて幼い太宰にそうしたようにぎゅっと抱き締めた。ぽんぽんと背を叩く。
 そうしていると暫くして太宰から寝息が聞こえだした。それは幼い頃と変わらない存在を隠すように潜められたものだった。
 朝になれば起こして朝食を食べさせた。動かない太宰に服を着せ、部屋を出るとそこで太宰はかちりと切り替わる。
 部屋の内か外かが太宰にとて一つの目安なのだろう。動かなかった表情が動く。
「あれ? 何で社長が?」
 首を傾ける太宰はまた昨日のことを覚えていなかった。



 それから二週間経っているが福沢は誰にも太宰のことは話していなかった。話せば終わりだと思っている。あの日の太宰の言葉からして太宰は人に他と違うと知られることを気にしている。もし今の状況を他の誰かに知られてしまったら、その心はより深く傷付き、壊れて戻すことが出来なくなる。そう福沢は考えていた。その考えを裏付けるように乱歩が福沢に云ってきたことがある。
 流石に乱歩は事情をすべて把握しているようであった。彼は太宰のことを頼んだよと云った。福沢さんだけしか無理だから。他の誰にも云っちゃ駄目だよ。やはりそうかと思った。そして誰にもいっていない。
 一人で生きることを止めてしまった太宰の傍に寄り添っている。
 自分では動かず表情一つ変わらなくなってしまった太宰。だが二週間共に過ごすうちにちょっとした変化が出始めていた。ほんの少しではあるものの感情が滲み出るようになったのだ。それは本当に些細なもの。例えば食事の時。好きなものであったら他のものより僅かに噛む回数が多くなり、飲み込むまでの時間がのびるだとか。風呂は体を洗われるよりも頭を洗われる方が好きで、ちょっとだけ体の力を抜く。お湯に使っていれば逆上せてきたら小さく身動ぎをしだす。眠っている時、ぎゅっとすり寄ってくるのは怖い夢をみたとき。朝起きる時、すりすりと布団に鼻先を押し付けるのはまた寝たい時だった。
 幼い太宰も同じ動作をしていたから、それが現れ始めたときすぐに気付くことができた。
 今は動かなくなってしまっただけ。感情をなくしたわけではないのだと、それらが現れ始めたときほっとした。
 それらの感情を失うことがないように、そしていつか再び動いて笑ってくれる日が来るように福沢は祈った。



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