第一話〜出会い〜




今日の夢は、ひどく不思議なものだった。いつも見る前世の記憶ではなかった。夢のなかで過去に存在した人と、これから存在する人と出逢ったのだ。こんなことは、今まで有り得なかった。いや、有り得てはならなかった。



「どうしちゃったのかなぁ、この世界」


「修鬼さん、おはようございます」


「よう、おはよう」



声がした方を振り向けば、そこにいるのはいつも見る友人だ。緩くウェーブがかかった淡い金髪と翡翠色の双眸の美少女、光蓮砂遠と、赤茶色の短髪に、深海色の双眸の少年、火良灯夜。



「普通、だよねぇ」


「今日不思議な夢を見ました」


「俺もだぜ」


「不思議な夢……」



修鬼は嫌な予感がした。毎朝待ち合わせをして、このような会話になることはまずない。それだけ砂遠と灯夜にとって不思議な夢だったのだ。



「若干わたしのような霧夜さん、という天使と、修鬼さんそっくりの暁さんという楽器と」



・・・・・天使と楽器?
一人はまだ理解できる。楽器とは一体。楽器が修鬼とそっくりだと。



「俺はキルアっていう男と、真都っていう剣士」


「俺も夢見たんだよ。黎っていう性別の概念がない男の子と、俺そっくりの修羅っていう鬼」



四分の三が夢を見ていた。しかも、過去と現在と未来が繋がって見えた夢だ。もはやこれを夢と言っていいのか、と修鬼は一人悩んだ。



「黎っていう子がさ、これは過去、現在、未来が繋がったことで見えた夢だって言ってたんだ」


「姫さんも言ってたよな?全ての時が一つになるって」


「えぇ、視えました」



つまり、この現在の世界で心の準備が満足に出来ているのは、未来を視ることが出来る砂遠のみということだ。未来が視ることが出来ずとも、落ち着いている人は若干二名ほど存在するとはいえ、そんなものはごく一部だろう。



「わたしがそう言ったら砂迦お兄様が、とうとう歪んだか、って」



まるで歪むことを知っていたかのような言葉だ。砂迦ならば知っていてもおかしくはないか、と動揺しないのは、言った者が砂迦だったからだろう。
 少し歩いて行けば突然騒がしくなった。修鬼たちは顔を見合わせると、すぐにそこへ向かった。近づいてすぐ、夜色のセミロングの髪をした子どもが男に絡まれていた。所謂、ナンパだ。



「私は忙しいのだよ、そろそろ通してくれたまえ」



絡まれているとは思えないほど涼し気なアルトだった。その声がまた美しいもので。



「バイオリンの修理をしなくてはならないのさ」



どこかで聞いてことがある。修鬼はそんな気がした。



「ちょっと君たち、辞めなよ。嫌がってるじゃん、その子」


「あ?なんだって、綺麗な姉ちゃんじゃねぇか」


「喧嘩売ってんのか?あぁ!?」



拳を振り上げ、固く握ると、とんでもない気迫にやられ、男たちが一目散に逃げた。



「キミ、ありがとう・・・!」


「君は・・・夢にいた」


「修鬼くんだね」


「黎ちゃんでしょ?」


「うん」



夢の中でも思ったが、可愛いよりの美しい人だと思った。砂遠や砂迦と出会った時の衝撃と似ていた。



「おい、言葉」


「暁。もう、どこいっていたんだい?」


「道に迷っちまってよ」



修鬼そっくりの少年が出て来た。しかし、修鬼と違うのはその口調だろう。修鬼の死神《リーパーグリム》時の口調と似ているかもしれない。



「もう、霧夜さん!ここどこ?」


「分かりません」


「ここだって言ったのあなたですよね?」



双子にソックリの子どもまで。



「あ!修羅くん!」


「ん?修鬼くん、黎ちゃん!」


「これは、お兄様に言うべきでしょうか」


「言っとくべきじゃね?」


砂遠と灯夜は二人で決めた。こういう時は砂迦に聞くのが一番だ。



「あのですね、これからわたしの家に行こうと思うのですが、皆さま如何でしょうか?」


「私はいいよ」


「俺もOK。ね、シャオ」


「あぁ」


「お兄様!?」



砂楽そっくりの少年が現れた。着ている服以外は全て砂楽だった。
砂遠は、学校に休みの連絡を入れると、フェリーを捕まえ、トワイライト王国へ全員を案内した。






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