第1話〜これが日常〜






ジークフリートside


俺たちがギルドに属してから、およそ二年が経った。俺とカルナは、現在『神聖なる七騎士≪サークレット・セプテッド≫』という部隊に所属している。
いつものように夢を見て、目を覚ました。


?「ジークフリート」

ジ「ユーリンか、どうした」

ユ「どうしたじゃないわよ。もう十二時よ」


カーテンを開け、空を見ればもう日が高く昇っていた。あれが父親というカルナは、やはりどこか浮世離れしている。というか、浮世離れしかしていない。歯に衣着せぬ物言いは健在なのに、彼を嫌うようなものはほとんどいない。彼の本質を知っているからだろう。半神でありながた、自分を特別としなかった英雄だ。

俺は、ユーリンに呼ばれ、一階に下りた。そこに、一際目立つあの男がいない。


ジ「カルナは?」

ユ「カルナなら、朝っぱらにミッションしに行ったわよ。ライトとフラウたちと一緒にね」


ユーリンが、カルナに「ジークフリートは一緒じゃなくていいの」と問うと、昨日のミッションで疲労(魔力不足)したのだろうから、休ませてやれと返されたのだという。確かに、昨日は久々に疲れる任務だったために、サーヴァントの命である魔力を消耗した。だが、その挙句に寝坊というのは、言い訳でしかないだろう。


ユ「昨日もわたし足手纏いになっちゃって・・・」

「足手纏いではない」

ユ「カルナ!?・・・ということは?」

カ「ああ、終わらせてきた」

「オレ、大活躍だったぜ!」


無邪気に、カルナの後ろから出て来たのは小麦色の肌をした少年だ。この少年はレベル3の魔術師見習いフラウという。孤児らしく、雨のなか救出されたという。ついこの間までは、ミッションにさえ参加させてもらえなかったのだ。この少年が、ミッションに参加できるようになったのは、外でもないカルナのおかげだ。フラウがカルナに弟子にしてほしいと乞うたのだ。無論、それを断るカルナではない。

コミュニケーションという言葉が苦手と公言していた男が、今では魔術師を目指す子どもたちの憧れの的となり、さらに弟子まで取っているのだ。カルナがその憧憬の眼差しに気づいているのかはさておき、なんとなく差が出た気がする。サーヴァントである俺と、サーヴァントではなく、半神という立場で召喚されたカルナでは、差が出るのは当然なのだろうか



昼食の時間(俺は朝昼兼用)に、ミッションのときの話で盛り上がった。「恐ろしく硬い龍の巣から宝石を取ってくる」というミッションだったらしい。



 「おそらくなのだが・・・」
 
 「なんだ?」
 
 「この任務・・・シルバーの依頼ではないと思う」
 
 
 これに関して言えば、今気づいたことだ。シルバーとは、俺たちが贔屓にしている薬師の名前だ。カルナ曰く、その人が危険な依頼をするとは思えないという。そう指摘され、コイドたちも考え込んだ。シルバーは、薬に関しては命を懸けていると言っても過言ではない。しかし、それでも危険な依頼をしてまで、薬を作ろうとは考えない。初心者でも出来るような任務として遣わされる程度だ。俺やカルナもここに来た当初はそれだった。
 
 
 「誰かが仕組んだと?」
 
 「リュード・ジュエルが鱗だと知るまでは、ただの任務だと思っていた」
 
 「知るまでは?」
 
 「リュード・ハシラーフと知っていれば、この任務はおそらく引き受けなかっただろう」
 
 
 
 俺もその言葉には驚いた。どんな無茶な任務だろうと、二つ返事で聞き入れ、異を唱えることなく淡々と遂行するカルナが、断ると言ったのだ。
 
 
「シルバーが持っていた薬になる素材を教えてもらった時に、ハシラーフは危険な薬だと言っていた。ハシラーフは、ただの魔力増強剤ではないそうだ。この素材には麻薬のような効果があると」
 
 
謂わば、覚せい剤のようなものだという。興奮作用があり、幻覚を見たり、幻聴を聞いたり、それが原因で周りの人間を傷つけたり、とそれを飲んでいいことはない。
 
 
「詳しいことはわかっていないそうだ」
 
「じゃあ、シルバーに調べてもらって、実験に利用させてもらうとしよう」
 
 
 これが危険なものだとわかった以上、これを依頼主に渡すわけにはいかない。薬師であれば、この鱗にどういう作用があるのか分かっていたはずなのだから。依頼主の居場所を特定し、不正を行っていないかもついでに調べてもらおうということだ。任務が変更されたが、マスターに事情を説明したところ、快諾してくれたらしい
 
 
?「それにしてもその槍、本当に壊れないんだね。誰かからもらったの?」

カ「いいや、オレが贔屓にしている鍛冶師に言って作ってもらった特注品だ」


カルナに話かけたのは、水魔法を得意とするフラウと同じレベル3の少年ライトだ。セミロングの金髪に蒼色の瞳をしている少年だ。穏やかで、少し引っ込み思案な少年だ。因みに、彼もカルナの弟子だ。

槍の名は『日輪の槍≪カヴァーチャ・シャリヤ≫』。カルナの基本装備で、光の泉の水と純金が混ぜられた槍だという。この槍から繰り出される技の苛烈さは知っている。この槍を作った鍛冶師に一度会ってみたいものだ。


フ「師匠、ジークフリート、このあと暇か?」

カ「オレは、今日はもうない」

ジ「俺も予定はない」


すぐにでも任務がやりたいくらいだが。
俺たちは、この後は暇だということで、フラウとライトに連れられて街に出た。






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