二人で分けて大分軽くなった荷物をひっさげながらわたしはのんびり進む。彼はわりと早歩きでどんどん距離が空く
「アンタ、ちょっとは急げよ」
「わたしとキミじゃ足の長さが違うんすけども」
「……」
あ、ゆっくりになった

***

「へえ、じゃあアンタ最近ここに越して来たんだ」
「ええ、まあ」
「ふぅーん…学校はどこ行くんだよ」
「ガッコウ…」
この世界ではチュウガクセイとやらまではガッコウに行くのが義務らしい。わたしのところはガッコウなんて建物なかったというか、上級貴族しか勉強を学ぶようなところにしかいけなかったというか。わたしの村では大人が総出で世界のこと、学ぶことを教えてくれていた。わたしは途中から旅に出て行ってしまったが。
話はそれたが、とにもかくにも手紙にはわたしもやはりガッコウに行かなければならないらしくて、たしかガッコウ名が、えーと、えーとり、り、り…
「リッシュンダイフゾクガッコウ」
「…立海大付属学校だろ、それ」
「多分」
彼は呆れ顔になったもののそれは一瞬で、今度は思議そうな顔であれ、でも、おっかしいなとぶつぶつ呟く。なんでも、彼のところではテンコウセイなどという噂話は聞いてないらしいのだとか
「転校生、アンタ名前は?」
「ミョウジナマエっす」
「俺は切原赤也」
ま、学校であったらよろしく。とのことで、これはわたしとしても嬉しい挨拶だった。仲間は一人でも多い方が心強い、冒険の鉄則である
ワクワクとガッコウへ行く思いを膨らませていればわたしの住み始めたマンションの前まで来ていた

ここまでで大丈夫だという旨を伝えるとキリハラさんは今度から家族と一緒に買い物にいけよ、と釘をさして荷物をわたしの腕に乗っけてきた
家族、ねえ
「家族ならいないっすよ」
「は?」
「えーと、一人暮らしでして」
「…その量買いだめ?」
「いいえ、今日と明日の朝の分っす」
「嘘だろ!?」
「本気っす!」
いまいち信じてくれないのかしばらく嘘本当問答が続き、堂々巡りになることに気がついたわたし達は静かになるのだった。
ちょっとばかし食材を多く買っただけで訝しげに見られるのはなんだか心外である

「それじゃ、ありがとうございました」
「あー、おう。じゃあな」
キリハラさんがわたしに背を向けて歩き始めたのを確認して、マンションの中へ入ろうとする
ふと、荷物の上にある林檎を見てわたしはハッとする
「キリハラさーん!」ゆっくりと振り返ったキリハラさんに、わたしは林檎掴み思いっきり振りかぶって、投げる。林檎は綺麗に放物線を描いてキリハラさんの元へ飛んでいく
うん、ナイスシュート
キリハラさんはかなり驚いた様子だったものの林檎はしっかりとキャッチしてくれていた
「それ、お礼っス!」もしかしたら荷物をまた落として食材を無駄にしていたかもしれないのだ、それを考えると感謝の気持ちを伝えられずにはいられなかった。とりあえずお礼を渡したのでわたしは早々とマンションの中へと戻り、階段を上る最中で料理のメニューを思案し始めるのだった。


「…変なヤツ」


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