仁王に手を引かれ着いた先、そこはすげー有名なアミューズメント施設だった。
どうせミョウジは知らなさそうだからめちゃくちゃアバウトに遊ぶ場所だと説明してみると、案の定呆けた顔をしていた。
そりゃそうだよな、いきなりこんな所連れていかれたらそうなる。俺もそうなった。
というか仁王はただ「遊ぶ場所ぜよ」とか「ピヨッ」しか言わないし俺とミョウジの腕を離さないので、街中でかなり目立ったんだぞ。これは恨むからな!ミョウジの方をチラと見ると 「丸井さん、なんかゲッソリしてません?」 と声をかけられたが、逆に何でお前は大丈夫なんだ?と聞き返したくなったぜ。
どうやらミョウジは恥より困惑の方が勝ったみたいだ

「ブンちゃん、そんな顔して睨んじゃ嫌ナリ」
「仁王お前いつか覚えてろよ」
「怖〜い、ミョウジチャン助けて」
「よくわかんないんすけどいじめちゃダメですよ、丸井さん」
「馬鹿野郎!いじめられてるのは俺の方だよ!クソッこうなったらめいいっぱい遊んでやるからな!」
「何だかんだノリノリじゃのう」

ここまで来たらそりゃ、遊ぶだろ。
最近テニスの練習ばっかりだったしちょうどハメ外したい気分だったんだよな
でも少し心配なのは、ミョウジだ。
こいつ、楽しめるのか?正直こいつが嬉々として行動していた所は飯以外見たことが無いくらいだ
まあ一緒にいるのがつまらねえ訳じゃない、んだけどミョウジってそういうキャラじゃなくね?
仁王も何か考えがあってミョウジをここに連れて来たんだろうけど、わりと不安だぜ
そんな俺の心配をよそに仁王はミョウジ連れてさっさと入るので、俺も一緒に入っていくのだった

「…あ」
「ん?どうしたミョウジ」
「すみません、お金今持って無いっす」
「おっちょこちょいじゃな〜ミョウジちゃんは」
「お前がいきなり連れ出したからだろーが」
「…そうだったのう」

悪びれもしない仁王は仕方ないからツケておくぜよと言いながら入口でミョウジの分の入場料まとめて払っていた。俺の分も払うことを期待していたが「ブンちゃんは財布持ってたよな?」と威圧をかけられたので普通に払った。つまんねーの

「俺まずはボーリング行きたいぜよ」
「おっいいな。じゃあその次はゲーセンで決まりな」
「ミョウジはどこか行きたいとこあるか?」
「わたし…わたしは、どこでも大丈夫っす。おまかせします」

そう言って落ち着かない様子で施設の中を見渡してるミョウジはまるで初めての所に来た子供のようだ
ちょっとだけ昔の頃を思い出したぜ。
俺も初めてここに来た時、あまりの情報量の多さに圧倒されたからな
そんで落ち着ける場所探してフラフラ歩き回って…見つけた場所が…たしか

「…ミョウジ、そっちは売店だぜ」
「あ、そうなんすか…足が勝手に…」
「……。」

案外子供っぽいのか?

△△△

「ミョウジちゃん、ファイトぜよ」
「仁王さん…」
「あとストライク出したらこっちの勝ちじゃ」
「それができたら苦労しないっす……」

ボーリングはあと1ラウンド、ミョウジの投げるボールで決着が決まる。
最初は3人でそれぞれスコアを競っていたが
ミョウジがあまりにも力を入れなさすぎてガターを決めたり力を入れすぎてガターを決めたりと可哀想な事になっていたので急遽仁王とミョウジでチームとなり、俺に挑む事となった。
俺はボーリングが上手い自信があるから2対1でも構わないぜと煽ったら仁王はカチンときたみたいで、結構いい勝負になっていた。ミョウジも頑張っていたがガターの連発で実質仁王と俺の一騎打ちみたいなもんだった
そして会話の冒頭に戻る。
ミョウジがストライクを出せば逆転勝ち、出せなければ負け。
ここまでミョウジはほぼガター
たまに1ピン倒してたぐらいだった
いくら初心者だからとはいえこの成績、背中から哀愁が漂ってるのが見える気がするぜ

この一投で勝敗が決まるせいか、中々ミョウジは投げようとしない。
俺がもう1ラウンドしてもいいんだぜと声を掛けたが、ミョウジはブンブンと頭を横に振った
情けはいらないということらしい
勝利を確信した俺は二人の茶番を眺めていた(ミョウジの方はわりと真面目だったが)

「仁王さん、最後までお役に立てなくてすみません」
「諦めるんか?ミョウジちゃん」
「ストライクなんて無理っす…」
「あ〜あせっかく勝ったら売店のパン奢ったのにな」
「パン」

あっなんか流れが変わった気がする

「しかもうちの学校の日替わりパン」
「日替わりパン」
「残念じゃ〜残念じゃ〜」
「……。」

ミョウジは姿勢を正したかと思うと、真っ直ぐ前を見据え、力強くボールを転がした。そしてそれは曲がらず一直線に転がっていき…綺麗な音を立ててピンを全てなぎ倒した
画面のスコアボードには古臭い映像でストライク演出が流れている

「…マジかよ、負けちまった」
「や…やりました!仁王さん!!」
「すごいぜよミョウジ、あそこでストライク出すなんて流石じゃ」
「仁王さんが激励してくれたおかげっす、ありがとうございます!」
「いや明らかにパンに釣られたよな?」
「ブンちゃん、水を差すようなこと言うんじゃなか。ミョウジちゃんはパンに釣られるおバカさんじゃないぜよ」
「そうっす、パンになんて釣られてないっす」
「じゃあパンじゃなくてもよくね?」
「それもそうじゃな。別のにするぜよ」
「嘘です、パンに釣られました」
「撤回すんのはえーよ」

ご褒美無くなりませんよね?とパンに必死なミョウジと、それをわざと渋る仁王のやり取りを見ていたら、なんだかおもしろくて耐えきれず笑ってしまった
仁王とミョウジが俺を間抜けな顔で見つめてくるのでさらに笑いのツボに入って止まらなくなっちまったぜ
負けたのになんか楽しくて
こんなことになるとは数時間前の俺は思ってなかっただろうな

「次は絶対勝つから覚悟しとけよぃ」
「私も次はパンと仁王さん抜きで勝ちますからね」
「俺パンと同等の価値なんか?」
「あっ、これはその、違くて…」
「しかもパンの方が先…仁王くん悲しいナリ」
「誤解っす!ていうか丸井さん笑わないで欲しいっす〜!」

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