「へえ、ブンちゃんと会ったんか」
「ええ。わたしのこと知ってたようで…仁王さん、丸井さんにいったい何を言ってたんすか」
「知りたい?」
「知りたいっす」
仁王さんはもったいぶって話そうとしない。いつもみたいににやにや笑みを浮かべるだけだ。わたしは根気よく仁王さんが話し出すのを待つ
すると仁王さんが話し出す前に、突然やけに派手で目立つリンゴが視界に入ってきたかと思えば丸井さんだった
「チョリーッス」
「ブンちゃん古いぜよ」
「ちょ、ちょり…」
「チョリッスだよチョリッス。日本式挨拶」
「ちょりっす」
「よしよしいい感じ」
「はあ…ミョウジが変な言葉を覚えていくナリ。仁王悲しい」

丸井さんが教室に入ってきたことにより、話の流れは大きく変わった
さっき何を話していたかもう忘れたのはいうまでもない。
どうやら食べ物をたかりに来たようだ
あいにくわたしは今日のご飯しか持ってきてない。仁王さんから貰った飴はあるけど、わたしの物なのであげる気は毛先も無い。仁王さんも持ってないと言っていたが、さっき鞄から箱型のお菓子を取り出していたところを見た(ちょっと貰った)ので嘘だろう。丸井さんはわたし達に疑いの目を向けながら、前の空席に座った。居座る気だ
「そうだ仁王!きいてくれよ、ミョウジ喫茶店で会ったときやばかったぜ」
「なになに何がやばかったんか」
「食いっぷり」
「…もしかしてミョウジ食べ方汚かったとか?」
「失礼っすね、普通っすよ」
「普通どころか超綺麗に食いつつスピードもはええの!俺よりも!」
「丸井さんが遅かっただけでは…」
「ブンちゃんが遅いとかミョウジ頭おかしいぜよ」
「至って正常っす」
「っていうかブンちゃんだけずるい」
俺もミョウジがご飯食べてるとこみたいとか、仁王さんはよくわからないことを言い出しはじめた。わたしのご飯風景を見て何が楽しいというのだ
「だってミョウジ、普段無表情のくせに飴とかポッキー一つで超笑顔じゃろ。食事時はどんだけ笑顔振りまくつもりなん」
だから見たいと好奇心の目で見つめてくる仁王さんに、わたしはそっとため息を吐いた
これは確実に珍獣扱いされている、たしかに前の世界に居たとき仲間にも似たような反応はされたがここまで露骨ではなかった。一応、わたしは人間なのだけど。
この流れになった元凶の丸井さんを睨むと、当の本人は仁王さんのお菓子を食い散らかしていた。い、いつの間に…
「ってことでミョウジちゃん今日は俺と一緒に昼飯決定ぜよ」
「あ、俺もいれて。俺もまた見たい」
「丁重にご遠慮したいところなんすけども…」
「ほーらミョウジちゃん新しい飴ナリ」
「!、アメ!!」
「欲しかったら一緒にご飯を食べるぜよ」
「食べる食べる食べる!」
アッと思ったときには仁王さんと丸井さんが質の悪い笑みを浮かべ言質取っただの逃げるなよだのわたしに圧力をかけていた。ハメられた。お菓子で釣るなんて実に卑劣である
「ミョウジチョロい」
「お手軽じゃきに」
「グウ…卑怯者…!」

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