今日はいい天気模様。晴れ、快晴だ 雲一つ無い。いつもなら体力作りに勤しむところだが今日は違う お金を握りしめ、わたしはまだ見ぬおいしい料理に希望を持ちながら街へ繰り出していた。お昼は食べてきたのだが、私の脳内ではもっと食えと信号がでていてつまるところお腹がすいている空腹状態である。 外にある看板を見ながらどこへ入ろうか考えあぐねていると、だ (お…) ラブラブ大盛りパフェ。ベリー系ソースを基本にみずみずしいフレッシュな果実を惜しみなく使ったカップルで楽しめるパフェです、か。カップルとかそういうのは果てしなくどうでもいいが大盛りというワードに目が引かれる。パフェというのも初見だ。 ちょうど今は甘い物が食べたい気分なので入るとしよう、デザート系の大盛りは初めてで気分が高まる さっそく店に入って注文するべく、ボタンを押した。どの店もボタンを押して店員を呼ぶというのは大変便利だがその手前をもっと料理に使った方がするのだが、今はそんなことどうでもいい。 店員がにこやかに注文を聞いてきたので、メニューにあるパフェを頼むと、ワンテンポおいて店員が微妙な表情になった 「すみません、こちらの商品はカップル限定でして…」 「え!そんな!」 「おいおいマジかよぃ!」 まるでタイミングを見計らったかのように重なった文句に、思わず後ろの席を振りかえって見ると真っ赤な髪の男の子目があった。わたしのメニューと同じ写真を指さしている。パフェ目当てか、奇遇だが何か制限があるようできっとわたし達は食べれないであろうことが店員二人の顔からわかる。 するとどうだ、男の子は席を立ったかと思うとわたしの隣に座り肩に手を回す。 「こいつ俺の彼女」 突然何を言ってるんだこいつは。わたしが動揺のあまり黙っていると、男の子はもの凄い形相でわたしを睨む。す、すごい迫力だ…しばらく見つめ合ってると口をパクパク動かしはじめた。 「(ぱ・ふ・ぇ)」 「(………!)」 「わたし、コノヒトと、カップル。ラブラブ」 「そーそー!俺の彼女もそういってんだから、このパフェ頼んでもいいだろぃ?」 「は、はい。ラブラブパフェがお一つ」 「は?」 「2つでお願いするっす」 「は…はあ……」 店員がそそくさと去っていったあと、思わず男の子とハイタッチをかわす。多分端から見ればおかしな光景だろうが、それでも構わなかった。下がったテンションが上がるとこういうことになるのだ 「いやーこれのためだけに来たのに食えねーかと思ったわ」 「わたしもそう思ってたっす…食べれそうでよかった…」 「てかカップルしか食えないってちっちゃく書きすぎ。」 「わかりやすくして欲しいっすよねえ」 「本当それ。上げて落とすとか最悪すぎだろぃ」 すっかり意気投合して話していると、店員が横からパフェを2つ分置いた。 ドンとか乱暴な音がしたのでもっと丁寧に扱っていただきたい。 スプーンを持って男の子は小さくいただきますをし、食べ始めた。わたしも同じようにし、パフェを口に運ぶ…お、おいしい!スーパーで買ったアイス、とかより柔らかく、口どけがなめらかだ。ソースと一緒に食べると甘酸っぱさが際立ち、さらにスプーンが進む。まだ果実は食べていないのにこの素晴らしさ!アイスはギリギリわたしの世界にもあったが、パフェというアイスを使ったアレンジ料理はなかった。この料理を作った人は天才だろう。 パフェを食べすすめようと、ふと視線に気がつく…隣にいる男の子だ。食べる手を止めてまで凝視されている、正直食べづらい。わたしはスプーンを置く 「…何すか?」 「いやー…ミョウジ、めちゃくちゃおいしそうに食べるんだなと思って」 「だってこれおいしいじゃないっすか。この、ほっかいどーばにらアイス、とかずっと食べていられるっすよ」 「ああそれめっちゃわかる。しつこくないんだよな甘さが!」「そうそう……ん?」 「どうした?」 「いや…何か違和感が…ううん…何でもないっす」 何だ…?何かがおかしい…あっこの果実おいしい。付け合わせにあるパリパリしたお菓子もおいしい。手が止まらない *** 「いやー食った食った」 「あ!」 「何だよいきなり」 「わたしの名前…」 「あ?あー…ミョウジのこと、仁王から聞いてたからよ。」 「そうだったんっすか…」 仁王さんのオトモダチだったようだが、わたしの名前だけ知れ渡っていくのはなんだか気持ちいいものではない。最近このパターンがとても多いので、不快とまではいわないが落ち着かないものがあった。 「俺丸井ブン太、お前とは隣のクラス。シクヨロ」 「シクヨロ…?」 「よろしくってことだよ言わせんな恥ずかしい」 「マルイさん、シクヨロっす」 「ぶっはマジで最初は名前の発音おかしいのな!」 ウケる、とゲラゲラ笑う丸井さんに、よくわからないがとても馬鹿にされたような気がして腹が立ったので脛を蹴ると、丸井さんは痛みの余り机に突っ伏してしまった。少し罪悪感が生まれたので常備してる飴をそっと頭の上に置くと無言でそれを食べ始めたので、わたしの申し訳程度の罪悪感は無事吹き飛んだ。 |